睡眠不足。それは何よりもの敵だ。
目を覚ましたまま一夜をすごした翌朝の、世界がどす黒く見えるほどの不快感をキミは耐えることが出来るだろうか。
全く現代社会の悪習だ!
人はエナジードリンクをかっこみ、その写真を撮り愚かにもインターネットにupする!
あぁ、なんて情けない!誇るべきことでは無いのに!
僕たちはもっと寝るべきだ。
健康のためにも、健康のためにも、自分のためにも
ブラウザバックして、目を瞑って、あったかくしておやすみ。
もし眠れないのなら、牛乳をレンジでチンして飲むべきさ。
いい夢を。
『さよならなんて、言わないでくれ…っ…!』
彼女の死体に縋り付く画面越しの彼
薄っぺらいラブストーリー
何度も使い回された脚本
安売りされた観客の涙
私は心の中で小さく毒づく
感想を求められれば目を潤ませてこう言ってやるんだ
「…うん、感動したぁ…、最後のセリフなんて最高だったよ…!」
なんて、ね
涙でぼやけた視界で君が動くのを見た
頭はうごかず視線は君の体に吸い付けられた
愛しい君
悲しい君
その目を開けることは無いんだね
その手で触れてはくれないんだね
たくさん笑ったね
たくさん泣いたね
夢のようだったよ
夢だったら良かったのにね
僕だって泣き疲れた
君の横で眠りにつきたい
君が泣かないでなんて言うから
君が生きろなんて馬鹿げたことをいうから
僕の心臓は惨めにも時を刻んでいる訳だ!
失敗した、失礼した、失敗した!!
「あーもー!!!なんてバカなことを!!!!」
顔から火が出そうだ、というか出てるよきっと。
見たか、彼女のあの顔を!
困惑から同情に変わった瞬間の顔を!
「言わなきゃ良かった、言わなきゃ良かったんだよ」 好きだなんて、冗談じゃないよ本気だよ、なんて。
「冗談だよ、って、今からいえば、間に合ったり?」
ばぁか。
「私が特別になりたかったから、私がそばに居たかったから、」
言葉はいらない、何も返事をしないで、
「ただ、」
ほほえんでそばにいて
お姫様のように育てられた深窓の令嬢…
「なーんてのは夢な訳で!」
ずごー、っと音を立てて紙パックのオレンジジュースを飲み干す。
「現実なんてのはこんなもんだよねー!!」
「なぁにサキやさぐれちゃってんの」
ゴミ箱に空になったパックを投げ捨てると友人のトモが背中をバシバシと叩いた。
「そんなにフラれたのがショックだった?」
「だってさぁ!アイツ、私と別れて、!あの名家の!!お嬢様と付き合ってんのよ!?!ありえない!!!」
「まー、そんなもんでしょ。」
恋愛経験が豊富であるトモはどこか老成しているようにけらけらと笑う。
「そんなもんって…私にとっては、初めての…彼氏だったのに…」
「あーもー、泣かないの!もっといい人は居るからさ!」
そんなことを公園で話した帰り道。
ふと目の前を飛んでいた蝶が花に止まった。
私はそっと蝶に近づき、その可憐な羽をむしり取った。
「…ざまぁみろ、」
蝶よ花よなんていうけれど、生きていく力が本当にあるのはどちらか。