優しいカムパネルラ
尊いカムパネルラ
君の正義は鋭利で苦しい
明日、もし晴れたら
満天の星空の下
君の名前を叫んでもいいか
「なにがしあわせかわからないです。
ほんとうにどんなつらいことでも
それがただしいみちを進すすむ中でのできごとなら、
峠とうげの上りも下りも
みんなほんとうの幸福こうふくに近づく一あしずつですから」
[燈台守の核心_『銀河鉄道の夜』ジョバンニの切符の一節より]
毎夜、羽根を失い続ける
目が覚めるたび
みすぼらしくなる心
何故、あの時
2本脚で歩く君の手をとれなかったのか
[天使の恋_だから、ひとりでいたい(何千年も君の手をまっている)]
ノスタルジックを感じたくて
少し大げさに
ラムネ瓶を傾ける
カロン、と
ビー玉がなく
その主張に
昔飼ってた
猫の瞳を思う
宇宙の果に繋がっていそうな
澄んだ瞳は
いつだって泣きたい僕に
静かに寄り添ってくれた
にゃーん…
カロン…
[ラムネ瓶のビー玉と猫]
夢の中に白いワンピースの少女が現れる
対比のように黒く長い髪は
冬の夜空のように
きらめき何処までも遠い
嵐が来ても彼女のそれらは
はらりとも揺らぎそうにない
その少女は私の同級生だ
高校生で自らホシになった
明るく美しい笑顔
恵まれた才能
なんでも持っている子だった
何でもできる子だった
訳が分からない
彼女にとっては
たくさんのうちの一人だっただろうが
私にとっては唯一の友人だった
許さない
私は許してない
いじめの加害者も
毒物を売り捌くやつも
『遊ぼう』って連絡できなかった私も
何年経っても全然なにも許せない
夢の中で
もう何度も彼女に手を伸ばした
私は大人になったから
いっしょにかえろ
彼女はいつも『ごめん』と口元だけで笑うと
嵐のような向かい風が吹いて
私だけが急速に遠のく
[コレハフィクションデス]
カナカナムシの声が引きずりだす
遠い記憶
私は昔からニンゲンと上手くやれなくて
いつも母を困らせた
かき氷に群がるくらすめいと、を
蟻みたいだと思いながら遠目に見ていたら
母がポンと背中を押すものだから
足が一歩前に出てしまった
私はそのままそこで
街路樹になってしまいたかった
[祭り囃子は、孤独の輪郭を撫でる]