[あの日の景色]
どうしても忘れられなかった。
僕はあの時の後悔を今後一生忘れることはない。
あれは俺が高校2年生の時だった、、、
僕の名前はひろと。
文武両道、しっかりとそこそこな学生だ。
新学期がスタートして、新しい友達が増えていく。
はずだったんだが、、
「どうしてだよぉ!」
やばい、友達できない。
新学期が始まってなんやかんやで2週間も経ったのに!
だが貯めた甲斐があった。
その日声をかけてくれたのは、学年一人脈が広いと言われている(ただの噂だろう)サッカー部のモテモテ野郎。
名前はあきとというらしい。
最初こそチヤホヤされすぎている彰人に嫉妬していたものの、一緒に過ごすにつれお互いに(だと思ってる)心を開いていった。
あきとも、人脈が広いと言っても心からの友達はあまりいないらしく、すごく喜んでくれていた。
そんなある日、あきとから相談を受けた。
「最近変なおじさんにずっと見られてる気がするんだ。不安だからこれから一緒に登校しようよ。」
僕はあきとがいうならと毎朝一緒に登校した。
あきとは学校から家が遠いらしく、だが奇遇にも僕とそれほど変わらない距離で、通学に苦労することはなかった。
というか一緒に登校する楽しさが勝っていた。
そして今日もいつものように駅へ向かうと、そこにあきとの姿はなかった。
僕は時間が時間だったのもあり、「ホームで待ってる」とLINEを入れ、改札を通ってホームに立って待っていた。
早く既読がつかないかとずっとそわそわしていたが、あきとはLINEに気づいていないようだ。
っとその時、あきとからの返信が来た。
「ごめん、寝坊したから今日は先行ってて!
マジごめん」
とのこと。
仕方ねぇやつ〜なんて心の中で呆れながら、
「OK
ホームルームには間に合うようにしろよ」
と返信した。
「これより、特急列車が通過します。危ないので黄色い線n、、」
とアナウンスが入り、僕が一歩下がったその時、「ドン」後ろから力強く押され、僕の体は線路に向かって落ちていく。
はっと後ろを振り返ると、そこにいたのはあきとだった。
あきとは目に涙を浮かべながら笑っていた。
この時、僕は咄嗟に思った。
「あきとは悪くない」と。
そしてすぐ来た電車に俺は跳ねられ、全身に強い衝撃が来るとともに、一瞬にして命を落とした。
そして目を覚ますと、周りには天使が飛び回る、いわゆる天国だった。
そして僕は自分が何者であって、性別は男か女か、どんな親や友達を持ち、何歳で命を落としたかも忘れていた。
ただただ幸せな気持ちでいっぱいだった(天国だからね)。
だが全て忘れたと思う自分をバカに知るように、決して忘れることのないあの景色が刻み込まれていた。
『涙』
俺はこの研究室でずっと過ごしている。
俺の名前か?
名前なんてない。
番号なら4771番だ。
人間ならみんな普通この研究室で過ごすんだろ?
この実験づくしの辛い日々を。
ここの博士に教えてもらったんだ。
でもある日、そんなことは全部嘘だとわかった。
その日すごく強い人たちがこの研究室を潰しに来た。
理由なんてわからなかったし、そいつらは多分人類の敵だ。
人体実験によって普通の人間より遥かに強くなっている俺を博士たちは戦わせた。
相手は10人程度。
俺が皆殺しにしてやる。
1人に殴りかかろうとすると、ふとなぜか今までのことを思い出した。
「俺って今までなんで生きてきたんだろ。
なんでこの人たちを殺すんだ?
この戦いは一体なんのために、、」
振りかぶった腕がゆっくりと降りていく。
「博士 何やってるんだ!
は、早く殺せ!」
その言葉と同時に1人女性が俺を抱きしめた。
「大丈夫。もう怖くないよ。
お姉さんたちに任せて。」
その言葉に自然と目から水が出てきた。
初めての体験で、でもなぜか、今まで隠し続けてきた
もののように感じた。
さっきのお姉さんが話しかけてくれた。
「お姉さん どうしたの?」
「俺 な、ぜか、目から、水が」
「お姉さん それは“涙“って言うんだよ。
悪いものじゃないから大丈夫!
自分の思いを伝えるのにすごく大事なものだよ。」
なみ、だ?
なみだ、なみだなんだ。
俺は溢れ出すなみだを止めることができず、
複雑な気持ち、だがその人たちに必ずついていくと
決心した。
大好きなのは、ひまわりの種。
えーじぇんとたそがれ
別れ際に
俺には大っ嫌いな母がいる。
あんまり俺が嫌うもんだから、アイツも俺のことを大層嫌っていただろう。
俺はアイツと少しでも早く離れたくて、アパートに引っ越し一人暮らしを始める。
もうすぐ家を出る。
荷物は全部引っ越し業者が先に持っていってくれた。
俺は電車でそのアパートまで向かう。
家を出る前、母がやたらと話しかけてきた。
「いい子にするんだよ、迷惑かけないようにね、ちょっと聞いてるの?」とか最後の最後までキショい親だよ。
一体俺を幾つだと思ってる。
「うっせーな💢2度と帰ってこねーからな!」
という言葉だけ残して家を出た。
別れ際に、母が何やら小声で呟いた。
「わ...はきr...れて...と大...よ」
そんなこと、いちいち気にするわけがなかった。
次の日、母が死んだと連絡が来た。
自ら踏切の中に入って電車に轢かれたようだ。
即死。
正直、悲しい気持ちなど微塵もなかった。
喜びの一心だけ。
最後に母の顔を拝みにいったが、もちろん遺体は原型を留めていない。
ふと横を見ると、少し大きめのバッグが置いてあった。
どうやら事故当時母が所持していたものらしい。
少し興味があり、中を見てみると、割と分厚めの本のようなものが入っていた。
表紙には「大切な思い出」と書いてあり、おそらくそれはアルバムなのだろう。
開いてみると、俺の写真や俺と母の写真など、母にとっての俺との思い出がたくさん詰まっていた。
それを見て一気に涙が込み上げてきた。
いつも、特に荷物もないのにやけに大きいかばんを持って行っていると思ったら、このアルバムを毎日、どこに行く時でも持ち歩いていたんだ。
俺はなんて親不孝ものなんだ。
誕生日や母の日に、一度でもプレゼントをあげたことがあったか?
日頃の感謝を伝えたことがあったか?
そんなことをしたことは、たったの一度もしたことがなかった。
俺は母の亡骸にこう囁いた。
「クソババアが...なんでこんなもん持ち歩いてんだよ...
気持ちわりぃ...」
こんな言葉しか出てこなかった。
ちゃんと感謝を伝えようとしたのに。
そういえば、母はなんて言ってたんだ?
人生最後の別れ際に。
「わたしは嫌われてもずっと大好きだよ。」