『涙』
俺はこの研究室でずっと過ごしている。
俺の名前か?
名前なんてない。
番号なら4771番だ。
人間ならみんな普通この研究室で過ごすんだろ?
この実験づくしの辛い日々を。
ここの博士に教えてもらったんだ。
でもある日、そんなことは全部嘘だとわかった。
その日すごく強い人たちがこの研究室を潰しに来た。
理由なんてわからなかったし、そいつらは多分人類の敵だ。
人体実験によって普通の人間より遥かに強くなっている俺を博士たちは戦わせた。
相手は10人程度。
俺が皆殺しにしてやる。
1人に殴りかかろうとすると、ふとなぜか今までのことを思い出した。
「俺って今までなんで生きてきたんだろ。
なんでこの人たちを殺すんだ?
この戦いは一体なんのために、、」
振りかぶった腕がゆっくりと降りていく。
「博士 何やってるんだ!
は、早く殺せ!」
その言葉と同時に1人女性が俺を抱きしめた。
「大丈夫。もう怖くないよ。
お姉さんたちに任せて。」
その言葉に自然と目から水が出てきた。
初めての体験で、でもなぜか、今まで隠し続けてきた
もののように感じた。
さっきのお姉さんが話しかけてくれた。
「お姉さん どうしたの?」
「俺 な、ぜか、目から、水が」
「お姉さん それは“涙“って言うんだよ。
悪いものじゃないから大丈夫!
自分の思いを伝えるのにすごく大事なものだよ。」
なみ、だ?
なみだ、なみだなんだ。
俺は溢れ出すなみだを止めることができず、
複雑な気持ち、だがその人たちに必ずついていくと
決心した。
3/29/2025, 2:22:01 PM