傷付かない方法とか怒らない訓練とか
反応しない練習とか考えない思考術とか
人間であることを止めるのはもういいんじゃない?
僕たちはどうしたって
かっこ悪くて、みっともなくて、惨めな存在で
誰かの言葉に傷付いて心を乱すし
余裕をなくして八つ当たりすることもある
助けた誰かに裏切られて絶望することもあるし
頑張っても報われなくて不貞腐れることもある
道を外してしまうこともある
でもそれが、僕が生きている証拠だから
僕たちに愛が、心がある証拠だから
ねぇ、僕たちはAIじゃないでしょ?
ねぇ、僕たちは生きているんでしょ?
まだ幼かった頃、菜の花に止まっていたモンシロチョウを捕まえたことがありました。
可愛らしい蝶々を近くで見たくて。
ただ、力加減の分からなかった僕は、その一羽の蝶々を握り潰してしまった。
僕の手にはあの時の感覚が今もずっと残っています。
ひとつの命を奪った感覚が今もずっと残っています。
それから僕が生きてきた何十年もの間に
一体どの位の命を奪って来たでしょうか。
気持ち悪いという理由で殺した芋虫がいました。
怖いという理由で殺した蜂がいました。
鬱陶しいという理由で殺した蝿がいました。
邪魔だという理由で殺した蜘蛛がいました。
ある時ふと思ったのです。
僕にこの命を奪う権利はあるのか、と。
自分が疎ましく思う存在を
それを理由に消す権利はあるのか、と。
命を奪わずに生きて行くことは不可能です。
僕たちは生きる為に食べなくてはいけないから。
ただ、目の前の生物に自分と同じ命があることを
目の前の生物が自分と同じように生きていることを
忘れないように生きて行こうと決めました。
僕のきらいなきれいごとの話ではなく
命を奪ったときに罪悪感を感じられる人間でいたいのです。
その罪悪感を常に持ち合わせている人間でいたいのです。
いつまでも忘れられない君の色
そんな僕が悲しくて
君にたくさんの色を重ねたのに
君を消すことは出来なかった
いつまでも忘れられない君の色
そんな僕が虚しくて
君にたくさんの水を足したのに
君が薄まることはなかった
忘れられない、いつまでも
だから僕は別の場所に別の色を描くことにしたよ
君の色はその場所に残して
たくさんの色を心に描くことにしたんだよ
そうして過ぎ去っていく日々が
君を僕の一部にしていくんだ
その時、僕という人間は君が全てではなくなるけれど
僕という人間の中に確かに君はいる
君を忘れらなくて辛かった日々も
ちゃんと全部が僕の一部になっていくから
もう君が僕を忘れても悲しくないし
もう僕が君を忘れられなくても虚しくない
僕は君のことがとても、とても好きだった
ただ君が笑っていることが幸せで
ただ君と話せることが幸せで
ただ君と同じ場所で過ごせることが幸せだった
僕の初恋は最も愛に近かったように思う
明日世界がなくなるとしたら、何を願おう
願い事なら数え切れない程あるんだ
だってこの世界は
不安と悲しみと恐怖と苦しみに満ちているから
願い事が尽きることがない程に歪んだ世界だから
それでも僕はきっと世界の最後の日に
こんな事を願うんだと思うんだ
これからもこの世界で生きて行けますように
叶うはずのないそんな願いをすると思うんだ
だって僕は
不安と悲しみと恐怖と苦しみに満ちた世界で
希望と楽しみと期待と喜びを見付け出す幸せを
知っているから