kurimu

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まだ幼かった頃、菜の花に止まっていたモンシロチョウを捕まえたことがありました。

可愛らしい蝶々を近くで見たくて。
ただ、力加減の分からなかった僕は、その一羽の蝶々を握り潰してしまった。

僕の手にはあの時の感覚が今もずっと残っています。
ひとつの命を奪った感覚が今もずっと残っています。

それから僕が生きてきた何十年もの間に
一体どの位の命を奪って来たでしょうか。

気持ち悪いという理由で殺した芋虫がいました。
怖いという理由で殺した蜂がいました。
鬱陶しいという理由で殺した蝿がいました。
邪魔だという理由で殺した蜘蛛がいました。

ある時ふと思ったのです。
僕にこの命を奪う権利はあるのか、と。
自分が疎ましく思う存在を
それを理由に消す権利はあるのか、と。

命を奪わずに生きて行くことは不可能です。
僕たちは生きる為に食べなくてはいけないから。

ただ、目の前の生物に自分と同じ命があることを
目の前の生物が自分と同じように生きていることを
忘れないように生きて行こうと決めました。

僕のきらいなきれいごとの話ではなく
命を奪ったときに罪悪感を感じられる人間でいたいのです。
その罪悪感を常に持ち合わせている人間でいたいのです。


5/10/2023, 2:07:46 PM