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___ 8 ただ、必死に走る私。何かから逃げるように。
あなたに言えなかった「ありがとう」
あなたに言いたかった「ありがとう」
あなたに言えなかった「愛してる」
あなたに言いたかった「愛してる」
あなたに言いたかった「ごめんね」
傷つけたことに対する「ごめんね」
どれを後悔しても
あなたは戻ってこないから
今日も私は
あなたが気に入っていた椅子の向かいに座り
あなたが気に入っていた紅茶を嗜む
あなたは紅茶に角砂糖を必ず二つ入れていた
あなたと同じようにすることで
あなたがいた時間を再び取り戻せると思った
「ありがとう」も「愛してる」も「ごめんね」も
もう二度とあなたに言えなくなった日から
いつもその紅茶は、少しだけしょっぱい味がした
「ごめんね。」
そんな声が、聞こえた気がした
___ 7 「ごめんね」
上昇する気温と体温
春の穏やかな暖かさは一変し
ぎらぎらと熱を放つ太陽
薄い素材の長袖も
気づけば半袖のTシャツを身に纏っていた
焼けて赤くなる皮膚
ひりひりとした痛みすら季節を感じさせる
長い袖による籠った重い熱からは解放され
代わりに直射日光の熱に悩まされる
コンビニからアイスを買って帰る途中
公園の蛇口から溢れる水を全身に浴びる
そんな何気ない日常には
きっと価値があるはずだ
例えそれが 己にとって邪険なものであっても
なんでもない〝それ〟こそ
鮮やかな人生の一部分なのだ
___ 6 半袖
嘘吐きには 地獄の苦痛を
正直者には 天国の愉楽を
悪人には 灼熱の炎を
善人には 清らかなる水を
であれば 〝 正直者の悪人 〟 は?
もしくは〝嘘吐きの善人〟は?
罪というのは全て 目に見えるものだけで決まる
〝心〟なんて目に見えない不可解なものは
重視されずに天秤にかけられていく
彼らはどちらに向かうのか
神は〝心〟を見ることが出来るのか
評論家ぶる私は
善人なのか 悪人なのか
天国と地獄 どちらに堕ちるのか
恐ろしさで眠れやしないのである
___ 5 天国と地獄
嗚呼、お月様 お月様
どうか願いが叶うなら
私たちを お助け下さい
厄災が 私たちの思い出を 踏み荒らしています
あなたがお望みであるのなら
この身も心も 命さえも 捧げましょう
嗚呼、お月様 お月様
どうか願いが叶うなら
あの哀れな娘を お助け下さい
彼女には 病弱な両親がおります
あなたがお望みであるのなら
私は悪になり 不幸になっても構いません
嗚呼、お月様 お月様
何故ですか 話が違います
あなたに命を捧げた彼女は還らないのに
もう二度と 助からない命なのに
私は悪になり 全てを失ってしまいました
常に牙を剥く危険な狼は
あなたに再び祈ることすら許されないのですね
この運命は 必然であったのか
それとも本当に 月の気紛れなのか
どちらにしようが 月は満ち欠けを繰り返す
時間と共に その光を纏いながら
月は今宵も私たちを見下ろし
見守っているのだ
嗚呼、お月様 お月様
どうか願いが叶うなら
続く言葉は 口から出ない
けれど 今宵も命あるものは
明るく眩しい朝とは違う夜を
孤独に 不安に 残酷に思い
跪くのである
___ 4 月に願いを