蝶になって遠くへ行きたい。
鳥になって遠くへ行きたい。
蝶のようにひらりふわり待って貴方の元へ。
鳥のようにぱたぱた羽ばたいて貴方の元へ。
あぁ、僕は人間がゆえ空を飛べない。
もしも、僕に蝶のように華麗な羽があれば。
もしも、僕に鳥のように華麗な翼があれば。
遠くの空へと羽ばたけたのだろうか。
あぁ、神様。
どうか、僕に蝶のような華麗な羽を
どうか、僕に鳥のような華麗な翼を
授けてください。
そうすればあなたの元へ華麗に飛んでゆきましょう。
あぁ、人間なんて辞めて生まれ変わりたい。
待っていてくださいね。
必ず貴方をお守りすることを誓います
「愛してる」
何度も聞きなれた心のない感情。
毎日身体の欲望を重ねるだけの日々。
愛してるなんて、言われたくもない。
「私も愛してるわ」
それでも心のない感情を返すのは唯のエゴだろうか。
彼が寝たのを確認しベランダに出て煙草を一服する。
「愛してる、ねぇ」
口に出してみても何も生まれやしない。
「バカな男ね。私は、、何なのかしら」
気がついたら頬に雫が伝っていて煙草からは火が消えていた。
「私は、欲望を吐き出すための道具なのかしら」
「誰がそんなこと言ったの」
後ろから声が聞こえては何かに包まれる感覚に陥った。
「っ。起きていたの」
「今起きたのさ」
そう言って抱きしめてくる彼は微かに震えていた。
「ほんとにバカな男ね、こんな私を選ぶなんて」
「君もバカな女さ。1人で溜め込むなんて」
どちらともなくキスを交わし部屋の中に向かう。
そして今度は心のある感情で身体の欲望を重ねた。
「愛してる」
「私もよ、愛してるわ」
そう呟いてそっと手を重ねた。
ぎゅっと握りしめて夜が明けるのを待っている。
ベランダには火の消えた煙草と缶コーヒーが2人を祝福していた。
「愛してるわ」
お題「欲望」
「いらっしゃいませ。本日はどう言ったご要件で?」
1人の客が迷い込んできたのは思い出の店。
「探してるんです。遠い街という本を、、」
女性は少し俯き気味に探している本の名前を言った。
「そうですか。少しお待ちください」
「はい」
彼女が返事したのを聞きカウンターへ戻っていく。
そして1つのダンボールから古い1冊の本を取り出す。
「お待たせ致しました。こちらですかね?」
「はい、これです」
「ではどうぞ。もう手放さないでくださいね」
「はい、では」
そうして客は帰っていった。
大事そうに本を抱えて。
ここは「思い出の店」
誰かの思い出の品物を預かっておく場所。
「今度こそお幸せに、、」
そしてカウンターへと行き1つの写真を取り出した。
「母さん、父さん、いつ戻ってくるんです?」
1人の青年はそっと呟き涙を一筋零した。
ーカランコロン
また誰かが思い出の品を取りに来たようだ。
青年は笑顔で受け入れた。
「いらっしゃいませ。本日はどう言ったご要件で?」
彼は思い出の店のオーナー。
思い出を自ら消した小さな青年。
彼の思い出は、、どこへ行ったのか。
そして遠い街へと彼は彼の店は消えていったのだ。
「ありがとうございます。またのご来店を」
今日もまた思い出を求めて、、さまよって行く。