青い青い
町内のアイドルだったあおいちゃんは商店街を歩くたびに大変な量のおすそわけをもらって帰ってきた。クラスの中心にいるあおいくんに告白したのは何人か数えきれない。そんな青い時代を駆け抜けてきたあおい。これからは「先輩のあおいさんはいつも周りをよく見ていて何かと助けてくれる」とか「あおいおじちゃんはいつも会うたびお菓子をくれる。」とか「あおいおじいちゃんは孫に甘いよね」とか言われるようになったらいいな。
sweet memories
今日は部活のメンバーでスイーツのパラダイスに来ている。私はまだ穏やかな方の2人と同じ席だったから平和にケーキを楽しんでいたものの、隣とその隣は引くくらいのテンションの高さ。一応他のお客さんに迷惑にならないように声のボリュームは抑えているが何せ存在がうるさいのだ。9人も集まっていればそりゃうるさくないほうがおかしいけど、同世代のおなじような子たちよりはるかにうるさい。それもこれも女子校という異性の目を気にしなくていい環境のせい。側から見たら色々終わっているなとか個性強すぎてついていけないとかポジティブな感想は抱かないけど、それでも私はこのメンバーが好きだ。人と仲良くなったり自分から話しかけたりするのが苦手で小学校中学校と慎ましい生活を送っていた私。泣いていても怒っていても何かを言いたそうにしていても誰も気づかない、自分なんていてもいなくてもいい空気のような存在だと思っていた。それなのに、高校に入ると部活が同じというだけでこんなにも個性と圧の強いギャル集団に放り込まれてしまった。最初は本当に場違いな気がして戸惑っていたのに、当たり前に私をメンバーの1人に数えて、輪の中心に引き入れてくれて、気づけば彼女たちと同じことで同じように笑う自分がいた。私の高校生活は思っていたよりも素敵なものだった、と総括できるくらいには楽しすぎる三年間だった。うん、本当にそう。でも、それに気づくのがちょっと遅すぎたな。
「…次、みんなで会えるのいつだっけ。」
「下宿組が帰ってくるのがお盆だからそんぐらいとか?」
「うん。じゃあ、ここでしばらくお別れかー。」
「ちょっと?!この子泣いてんだけど。早いってー。」
「もうあんたはすぐ泣くんだから。」
「お別れっていっても会えなくなるわけじゃないんだからさー。」
「まぁ、でも今まで毎日顔合わせてたもんね。」
「泣くなー!ちょ、誰かこの泣き止まない子ども笑わせたげて。」
「あやさなきゃ。ほら、保育士志望いけ!」
春休み、みんなで集まれる最終日。涙でふにゃふにゃの視界の中、みんな笑いながらもちょっとその目が潤んでいるのがわかる。本当にずっとこのままでいたいな。
風と
風と共に首からあたたかいマフラーが去ったあの冬から数年。あのマフラーは色々あって結局汚れがとれなかったからさよならしたけど、彼女が選んでくれた新しいマフラーの方が気に入っている。マフラーが風に飛ばされたおかけで繋がった縁をこれからも守っていきたいから、今度は飛ばされないようにこれでもかというほどきっちりと巻く。
軌跡
新しく習い始めた軌跡の分野がどうしても分からなくて、先生に何度も教えを乞いたけど、自分の頭ではまだ理解ができなかった。この分野を学び始めるまでは数学は結構得意な方だと自負していたし、将来は数学の教師になるのもアリだと思っていたが、急な壁に当たって公式がどうとか、図形がどうみたいなことに疲れてしまった。
「そう。だから、プロボクサーになったんです。」
「…もう少し詳細を教えていただいていいですか?チャンピオンになるまでの軌跡を全て記事にさせていただきたいので。」
好きになれない、嫌いになれない
何かあるたびに絡んできて、話も全く合わないし、いまいち好きになれない。
何かあるたびに絡みたくなって、そっけない対応ばかとられるけど、どうしても嫌いになれない。
何かあるたびに絡んでくるから、少しずつ仲良くなって、今ではもう嫌いになれない。
何かあるたびに絡んでいたけど、仲良くなってみたら思ってたのと違って、前ほど好きになれない。