今年は
例年よりも
楽ができた気がする
明日で
もう終わってしまうらしい
来年は
もう少し頑張ろう
おやすみなさい
机の上に
甘い蜜柑がいくつか乗っていた
それは確かに甘かったが
同時に酸味を感じた
橙の皮の中にある
橙の実は
柔らかい食感で
甘味であり酸味もあった
この丸い球体が
もはや日本の冬になくてはならない
果実になっていたことに
最近気づいた
気がつけば冬にその果実を食い
年を越すことが
毎年欠かさぬ行為になっていた
気がつけばそうなっていたので
何時からそうなっていたのか
全くわからない
そのせいなのかもしれぬが
蜜柑を食うことにより
一年が終わる
悲しさと
寂しさを感じるようになった
これも毎年年末に
蜜柑を食うようになったせいだろう
だがその悲しさと寂しさを含む甘露と酸は
毎年私を救う味となった
これも気づけばそうなっていた
具体的にどうなるとか
そういうことは分からないが
その実を味わうときに
私は何故か
救われる気分になるのだ
机の上のいくつかの蜜柑
私はそれを黙って食う
そして黙って
年を越すのだ
特に何をするわけでもなく
大人しく寝て
美味いもん食べて
また寝る
そんな冬休み
おばあちゃんにかってもらった
わたしのてよりもおおきなてぶくろ
ぶあついぬのにおおわれたては
いまぬくもりにつつまれた
そとはとてもさむいから
うわぎとまふらーきせてくれた
そしてわたしはいままさに
おばあちゃんのくれたてぶくろを
りょうのてにつけようとしている
てぶくろのもつぬくもりは
そのもののあたたかさだけでなく
だいじなだれかがあたえてくれた
ひとのあたたかさ
おばあちゃんにかってもらった
わたしのてよりもおおきなてぶくろ
そのぬくもりをまとったりょうてで
ゆきだるまひとつつくってみよう
そとにでてみてためいきつけば
いきがしろくなっていた
ひょうてんかにまでなるさむさでも
わたしはちっともさむくなかった
このてぶくろがあたためてくれた
てぶくろのもつぬくもりに
なぜだかとてもあんしんするの
よわいわたしをまもってくれる
そんなきがしてあんしんするの?
やさしさにあふれるこのてぶくろは
せかいをへいわにしてくれるのかな
だいじなだいじなそのぬくもりで
せかいをへいわにしてくれるのかな
そうなるといいな
おばあちゃんがかってくれた
このてぶくろで
変わらないものはない
流れ行く雲
色の剥げた銅像
歩けなくなった犬
落ちるりんご
全て変わり続ける
変わらないものはない
廃れた寺院
丸くなった河原の石
伸びる草
枯れゆく木
全て変わり続ける
変わらないものはない
崩れ行く崖
乾き罅割れる土
滅びゆく生命
愚かになっていく人間
全て変わり続ける
変わらないものはない
変わり続けるだけである
それだけは
何も変わらない