風に乗ってあの世界に行ったら君に会えるかな…
僕だけに笑いかけてくれる君に…
自分のことはそっちのけで僕のことばかりを考える君に…
あの日…もし僕と君の位置が逆になっていたら……
僕はあの世界に…
君は両足と片腕を失うだけだったかもしれない……
なぁ……美月……
僕は…もうすぐ君のもとに行くようだよ………
今更だけど…遅くなってごめんね……
僕は……ずっと君にあんな態度とってたけど……
本当に……君を………とても愛していたよ…………
ピピーーーーーーーーーーーーーー
私はこの病院に務めて10年だがこんなに胸を締めつけられるような死に方をした人に初めて会う……
彼女を目の前でなくし自身も両足と片足をなくして……
なのに…そんなものはちっとも悲しくないと言わんばかりに…毎日満遍の笑みを浮かべている……
最初は本当に何も感じていないのか……と思ったがそんなことは勘違いだった……彼の死に顔を見て分かる………
彼は今……とても……とても……幸せそうだ………
彼から流れ落ちるその涙は真珠のようにとても綺麗だった…
まだ善悪がつかない頃の僕に戻りたい…
何もいらない…
何もいらない…
テストなんて…
何もいらない…
窓の外はとても暑そうだ……
見ているこっちまで暑く感じる……
夏休みが終わるまであと3時間半だ……
あと3時間半で、僕は何ができるだろうか………
宿題?それとも…テスト勉強?
あぁ……どれもこれも嫌なことばかりだ…
だからといってこのままでは
単位がやばいぃ!!!…から絵だけでも描かなきゃ……
面倒だな……どうしよう……何にしよう……
〜学校〜
「ちょっといいかな?…逆田くぅ〜ん〜?…」
今日の先生はなんだかとてもご機嫌がお悪いようだぁ〜…
先生の笑みがとても怖い………
「お久しぶりです!!どうなさいましたか?」
先生の顔を伺う…………先生は呆れたように………
「えっと〜この紙は……なにか聞きたいんだど……………これは何かなぁ〜」
先生の笑みがさっきよりも強烈なものになっている………
あぁ怖い…
「う〜ん……そうですね~これは無色な世界という作品です〜…………ハハッ……(*ノω・*)テヘ……」
二人の間に風が吹いた…
その後………彼は生徒指導室行きとなったトサ…………
薄墨ザクラの花びらが風と一緒に楽しそうに踊っている…
ちょうどこの頃だったか…君とここの桜を一緒に見たのは…
君との恋は桜が散るように儚かった…
もう僕の隣には君はいない……
君がいなくなった隣はまるですっぽりと穴が空いているようだ…
サクラを見ていると僕の胸の中から何かが込み上げる……
…
「ねぇねぇパパ、ママ!とっても綺麗だね~」
三つ編みをした娘が満遍の笑みで僕達に話しかけてきた…
「そうだね~」
娘にそう答える妻はとても満足そうだ……
良かった…
妻と娘を見ていると……時々複雑な気持ちになる……
こんな中途半端な気持ちで本当にいいのだろうか……
もうすぐ次女が生まれるというのに……
たとえ、僕が全力で愛せないとしても、僕は僕なりに愛を伝えようと思っている………
なぁ…聞こえるか……
もうこの世にいない君へ……お願いだ…
いつまでも僕達をどうか見守っていてくれ……
僕が世界で一番愛した君………これからも好きでいる君