「1年前」
私は1年では変わらない。
でも、どうにか良い方向に変わらなければ。
1年前、焦燥と不安とを抱えて過ごしていた。
つねに緊張して、心の中で自問自答をしていた。
どうして、こんなにも感情が揺れるのか。
どうして、やる気が湧かないのか。
どうして、自分は無力だと思うのか。
答えは出ない。動画やゲームで不安を誤魔化す。
誤魔化すためだから、何も楽しくない。
こんな生活でごめんなさい……ごめんなさい。
そんな1年前だった。
しかし、私にも少しずつ変化はあった。
そうして今できることを楽しもうと思い至った。
きっかけは家族の言葉だった。
せっかく穏やかに過ごす機会がめぐってきたのだから、甘えておけば良い。
成長するタイミングは生きている限り掴めるから。
救いだった。ありがとうと思った。
そうして、今の私は生きている。
相変わらず私の感情の起伏は激しい。
それに、ちょっとしたことでも深く落ち込む。
だけど、「喜び」「楽しみ」を思い出しつつある。
「好きな本」
友達や先生の影響で読書が好きになった。
読む本が増えて、好きな本が増えてきた。
一番を決めるのは難しいが、特に小説が大好きだ。
その日に読む本を決める時間、じっくり読む時間、しばらく内容に浸る時間が私にとって癒しの時間だ。
創作「あいまいな空」
A「曇って来たよ。降るかなぁ、雨」
B 「うーん晴れるでしょ」
A「狐の嫁入りが見たーい」
B「それはわかる。でも雨はいやだな」
A「あれっ、なんか降ってきたよ」
B 「ん?あれは……」
A、B「Cさん!?」
C「Aさぁぁぁん、Bさぁぁぁんどいて、どいて!」
空いたスペースにCは無事に着陸する。
C「二人とも、こんにちは!」
B「すごい勢いで降って来てどうしたんだ」
C「あいまいな『文』と見えたので、蔵に入っていた文章を届けようと飛んで来ました!」
Cはまぶしい笑顔で原稿を二人の前に差し出す。
A「あいまいな空、だよ」
Cはしばしぽかんとした顔をして、にこりと笑う。
B「あいまいな『空』だよ」
AとBの顔を見たCは真顔になった。そして一番上の創作の横を見た後どこかへ消える。しばらくすると小括弧に挟まれた一文字を引きずって戻って来て、文章の右下に置いた。
(終)
創作「あじさい」
彼はまさにあじさいだった。置かれた環境で振る舞いを器用に変え、他人からの厳しい視線や言葉にもじっと耐え忍んでいた。降りかかる雨に耐えるあじさいのように、淡々と。
僕は彼と何度か話す機会があった。といっても天気の話から始まり、趣味や好きなものなど無難な内容をお互いにぽつぽつと繋げる。道や廊下で顔をあわせれば、会釈を交わす。その程度の関係だった。
ある日の午後、僕はどこかの店に傘を置き忘れてしまったことに気づいた。帰ろうにも雨足は強まるばかり。どんよりした空を軒先で見上げ、雲が途切れることを願う。すると、軽く肩を叩かれた。
「傘、貸しますよ」
彼であった。 濃い青の傘を差し出して柔和な笑みを浮かべている。反射的に傘を受け取った僕ははっとし、借りても良いのか尋ねた。
「大丈夫ですよ。折り畳み傘があるので」
「ありがとうございます。明日、返します」
少し恐縮しつつ傘を開く。歩きかけた彼は足を止めて僕を見る。
「そうだ、一緒にお茶しませんか。雨の日限定のケーキを出すお店があるので」
普段、付き合いの悪い僕には珍しく彼の誘いに乗っていた。単に、ケーキに興味が引かれただけではないらしい。彼と心から話してみたいと、柄にもなく考えていたのだった。
雨の音で目が覚めた。僕は彼の腕の中にいる。 彼の言葉はあじさいの葉のようだ。一言でも飲み込めば、激しい恋の病に侵されてしまう。
彼は僕だけのあじさいだ。
(終)
創作「好き嫌い」
論理的な言葉で相手に好意を伝える表現が好き。
短絡化した思考で誰かを敵にまわす言動が嫌い。
あくまでも私個人の好き嫌いの基準です。
今後、変化することがあります。
「堅苦しいですよね。私は正確に情報を伝えることを優先して、つい、このような書き方になってしまうのです」
「できれば、文学らしい表現がしてみたいです。しかし、比喩や指示語を多用すると内容が伝わりづらくなるので最小限にとどめています」
A「みたいな文章が好きすぎてつらい」
B 「ふーん、説明書みたいな文章だねぇ。これのどこが好きなの」
A 「もう、全部、全部。で、ごくたまーにため口になるのが特に好き!」
B「なんか怒ってる感じがして怖いけど、大丈夫?」
A「そこは、自分の読解力を信じるしかないかな」
B「そっか必要なことしか書かれてないもんね」
(終)