谷折ジュゴン

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6/11/2024, 1:02:02 PM

「街」

忙しい人と疲れた人と騒がしい人……色んな人が行き交って、絶えず地下鉄の入り口の音が響き、雑多な看板や広告が並ぶ通りがあり、見上げるだけでぞわぞわする高さのビルが建っている。

ビルとビルの間に老舗が暖簾を掲げていて、神社やお寺がひっそりと昔の面影を守っている。

空白を嫌うように建造物がひしめき、夜を忘れようと街灯や窓が煌々としている。

田舎者である私には縁遠い暮らしの場だ。

6/11/2024, 2:09:05 AM

「やりたいこと」

球体関節人形を手作りしたい。
人形に着せる服も合わせて作りたい。

箱庭を作って何も考えずに眺めたい。

大きいうさぎを撫でたい。

ジビエ料理を食べてみたい。

豆本を集めて飾りたい。

6/10/2024, 3:10:56 AM

「朝日の温もり」

冷えた体をほどよく温めて

夜を越えられたことに感謝する。

朝日を温かいと思える日は

穏やかな幸せに満ちている。

6/8/2024, 12:04:37 PM

創作「岐路」

少しずつ、少しずつ、脇道にそれて来てしまった。
岐路に建つ木の看板。左側は人の村の名前がかかれ、右側は獣の村の名前がかかれている。ぼくは頭に手をやった。つるりとした角が指先に触れる。今度は腰に手を当てる。尻からはゴムに似た感触の黒い矢印形の尻尾が生えている。だけど、見た目は素朴な人間の男だ。

人でも獣でもないぼくは、どちらに進めば良いのだろうか。見た目に合わせて人の村へ向かうとする。昼間は人間らしく過ごしていても、夜になれば人を喰う。すると、ぼくは追い出されるか、殺される。性質に合わせて獣の村へ向かう場合、これもまた、住民を食糧にしてしまうだろう。

どちらの村も滅ぼせば、ぼくは今度こそ倒されてしまう。看板をにらみ長考する。

「おや、旅人さん。そんなところで困りごとかい」

振り替えると大量の薪を背負った青年が立っていた。そして、彼はしきりに鼻を動かす。

「む、もしや旅人さんは魔人か」

ぼくは狼狽え、はいと答えた。なぜわかったのかたずねると青年はにやりと笑って手を二度叩いた。ぼんっと煙が立ち一匹のたぬきが現れる。

「わたしはね、人に化けて人の村に住んでいる古だぬきだ。この村の伝統料理に惹かれ暮らし続けてもう十二年になる」

青年の姿に戻った古だぬきは薪を背負い直し、人の村への道へ入って行った。

「うまいものが喰いたけりゃ、こっちに来い。でなきゃ他を当たるんだな」

ぼくは唾を飲み込み、古だぬきの後を追った。
(終)

6/7/2024, 12:26:03 PM

創作「世界の終わりに君と」

世界の終わりに君と共に生き延びるとは限らない。

なぜなら私たちはただの一般人だからだ。世界が終わる原因に巻き込まれてどちらかが先に死ぬかもしれない。それにライフラインもインターネットも交通機関も機能しないならお互いに連絡をとる手段は皆無だ。

さらに、世界が終わる危機を事前に知ることは特殊な立場の人間でない限りほぼあり得ない。すると、私と君は何も知らずに世界が終わることだってあり得る。

そして、もし長期間の危機ならば戦闘力か何かの要員として生き別れになることがあるだろう。あるいは生き物同士の接触の制限があるかもしれない。

だから、必ずしも君と一緒に生き延びられるとは限らない。

……最悪なシナリオでしょ。
世界が終わるほどの状況下で、恋愛や友情を優先させる余裕が私にはないんだ。ごめんね。

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