過去へ行く方法を実践する
そして二日間に同時に存在する方法もだ
今は夜
ここから東へ向かって船で航海する
この夜空を越えて、着く頃に朝となる予定の場所
そこで私は半分過去へ行き、もう半分は現在に留まる
計画に協力してくれた人々には感謝だ
さあ、出航だ!
吐いた
吐き続けた
船酔いだ
こんなに弱いとは思わなかった
私は車で本を読んでも平気な人間なんだが
このままでは二日間に同時に存在するのが難しくなってしまう
気分的にゲッソリしていると、乗組員がよく効く酔い止めを持ってきてくれた
ありがたい
目的の場所に着くまでに復活できるといいが
なかなか復活できない
よく効くんじゃなかったのか
私の心は焦燥感でいっぱいだ
今回のために大枚はたいたのに
いや、金銭的な心配もあるが、一番の心配は目的が達成できないことだ
早く気分がよくなってくれ
ギリギリだった
もうすぐ目的の場所だ
ようやく酔い止めが効いてきて、信じられないくらいスッキリした
酔う前より絶好調だ
変なものが入ってたりしないよな?
ともかく、船を最新の超技術で海上に完全固定
波が揺れようが風が吹こうが船はその場に留まり続ける
朝日が眩しい
さあ、これから半分過去へ行き、半分現在に留まるぞ
方法は簡単だ
日付変更線
これをまたぐ
12月11日と、12月10日
この二日間に、私は同時に存在している
まさに半分過去、半分現在
見る側からしたらなんのこっちゃわからない画像だろうが、記念写真を撮る
イエーイ
さて、私も乗組員も一通り満足したので、とっとと帰ることにした
用が済んだらすぐ帰るのが賢明だ
くだらないと思うかい?
だが、そう思わない人間がいたから、実現したのだ
大事なのは、本人がどう思うかだよ
「なんかさぁ、他人に冷たくされ続けた人生だったよ」
怪奇現象が起きるからと、依頼人の住む一軒家へ除霊しに来たけど、まさか幽霊の愚痴を聞かされることになるとは
霊になるほどだから、愚痴も長い長い
というか、ところどころ同じ話を繰り返してるなこの霊
二時間もよく愚痴れるものだと感心する
なんか、生前に誰からも優しくされなかったんだって
うん、可哀想だとは思ったよ
でもそろそろキツいんだよね
さすがに、赤の他人の愚痴を聞き続けるのは……ねぇ?
友達のなら乗れるけど
「ありがとな
俺の話を黙って聞いてくれたのはあんたが初めてだよ
他のやつは話の途中で俺を否定してきたから」
「スッキリできたならよかったです」
やっと終わった
まだまだ続くようなら、強制的に除霊するところだったよ
「あんた、優しい人だな
生きてるうちにあんたみたいな優しい人に出会いたかったよ」
う……
そんなふうに言われると、嫌々聞いてたから罪悪感が……
私、早く終われと思ってたんだけど
申し訳ないから、何かしてあげたいな
そうだ
この人、本当に生前いいことなかったのかな?
いい思い出を呼び覚ませば、気分よく逝けるかも
「他人に冷たくされ続けたって言ってましたけど、本当になにも無かったんですか?
誰かに優しくされた、ぬくもりの記憶みたいなものは」
「ぬくもりの記憶、かぁ
そんなのあったかな
……あぁひとつだけあった」
よかった
なにかあったみたいだ
「色々とうまくいかなくて、公園で頭抱えてたことがあってな
その時、見知らぬ小学生の女の子が俺に、元気が出るからって言ってお守りをくれたんだ
あの時は、笑顔で感謝して、女の子が帰ったあとで嬉しくて泣いたな
あれが人のぬくもりなんだなって思ったよ」
ん?
なんか昔、私も似たようなことやった気が
というかその話、私じゃないかな?
お守りってアレだよね
私がアニメを見て折り紙で手作りしたやつ
「そうか、あんただったのか
これも運命ってやつなのかな」
霊は穏やかな顔で笑う
「俺はあんたの優しさに二度も救われたんだなぁ
あんたの手で除霊されるなら、未練はないよ」
どうやら、もう思い残すことはないらしい
私は心を込めて、目の前の霊を除霊することにした
「最期に会えてよかったよ、ありがとな」
除霊の儀式の最後に、霊はそう言って、ものすごくいい笑顔でこの世から消滅したのだった
最後、満足そうに逝けたみたいでよかった
もし、今度生まれ変わることがあれば、幸せになってほしいと、そう願わずにはいられない霊だったな
どうも、指からビームを発射できるだけのごく普通の男です
この能力で今から悪の超能力者をやっつけようと思うのですが、なんと、めちゃくちゃ寒い
厚着しているのに凍えそう
残念ながら手袋を忘れてしまい、手は戦闘前からかじかんでいます
こんな凍える指先ではガタガタ震えてしまい、照準を合わせることなど不可能
つまり、さっきから外しまくってます
こんなに当たらないのかと思うほど、一発も命中しないわけです
その間も悪の超能力者はその辺の石を容赦なく飛ばしてきます
しかもでかいやつ
これは一個でも当たったら死ぬやつですよ
とっととビームを命中させて気絶したところを捕縛しないと
一発でも当てられれば、こちらの勝利なんですけどね
こちら、普通の男なので、ビーム以外は貧弱なわけで
避けるので精一杯
凍えて指先も震える
ダブルで照準を合わせられません
勝ち目ない感じがしますよ
そもそも普通の男がなんで悪の超能力者と戦ってるんでしょうね
指からビーム出るだけで戦わないといけないなんて、酷いですよ
給料はいいですけどね
同僚も気のいい人ばかりですし
ただ、危ない
こんな仕事、できればやりたくないですよ
でも、ビーム出ちゃうとやらざるを得ない
それにしても、そろそろ勝たないと本当にマズい
こうなれば接近してゼロ距離でビームを出しますか
それなら必ず当たりますから
石の雨を避けて、とりゃー!
よし!
なんとかなりました
気絶したのでこれから捕縛しまーす
雪原の先へ行っても、雪原は続く
見渡す限り白銀の世界
地面も白ければ曇り空も白い
白、白、白、白
雪、雪、雪、雪
もうたくさんだ
こんな一色しかない世界にいたら狂ってしまう
僕の体も、石膏のように白くなっている
逃げ場がない
いつまで歩けば許される?
どこまで行けば終わるんだ?
僕が罪深いことはわかる
だからといって、こんな目に合わなければいけないのか?
あんなことになるなんて思わなかったんだ
触れてはいけないものだとは知らなかったんだ
僕が「あれ」に、不用意に触れたせいで世界の法則が書き換わってしまった
発生するはずのない、発生してはいけない現象が起き始めたのだ
管理者は怒り、僕をこの牢獄で償わせることにした
ただ、白い世界を歩き続ける罰
もはや拷問だ
管理者なら、誰かが触れられないようにしておけばよかったんじゃないのか?
管理を怠っておいて、僕ひとりに責任を押し付けるなんて傲慢だろう
いつの間にか、あたりの様子が変わってきた
空は赤くなり、雪原の雪は解け、紅の水が地面に張っている
怒り
僕の怒りに呼応して、世界の有様が変わっているのだ
僕が「あれ」に触れて、法則が書き換えられた
だから法則を理解できたし、その法則を利用することもできる
書き換えられた法則を用いて、管理者へ復讐を果たす
さあ
ここから出て、管理者のもとへ……
僕の心には、暗い炎が宿っていた
俺はいわゆる雑魚モンスター
この世界で新米戦士の経験値となるために生まれてきた存在
Lv1からLv3くらいの戦士が俺を狩るのだ
ああ、安心してくれ
俺は倒されても蘇る
そう設定されているからな
当然のことながら、俺に負けるようなことがあってはお話しにならないので、冗談みたいに弱く設計されている
その弱さの原因のひとつが、「白い吐息」という行動だ
文字通り、俺は白い吐息を放つ
以上
「しかしなにもおこらない」、というやつだ
超雑魚モンスターにありがちな、無意味な行動
万が一にも、新米戦士を戦闘不能にしないようにこうなった
他にも「たいあたり」とかあるのだが、4割の確率で「白い吐息」を発動する
俺に負けるような新米戦士は、もう向いてないどころか、わざと負けたとしか思えない
俺がいかに弱いかがわかってもらえたと思う
さて、そんな日々を送っていた俺だが、チャンスが訪れた
戦士はモンスターを倒すことで経験値を取得し、レベルが上がる
しかし、モンスターは相手にダメージを与えただけで経験値を得られるのだ
それは倒されても引き継がれる
ただし、レベルが上がっても強さは変わらない
途中までは……
モンスターは一定レベルに達すると、クラスチェンジへの挑戦権が与えられる
上位モンスターへ進化できるというわけだ
俺の種族名をまだ言ってなかったな
俺はスノウボール
氷属性の最弱モンスターだ
いや、雪玉じゃないぞ
雪玉みたいな見た目の真っ白い球状のモンスターだ
大福なんて呼ばれることもある
そして、俺はついにクラスチェンジに挑戦可能になった
失敗すれば経験値はパー
最初からやり直しだ
上位モンスターが量産されたら困るから、これは仕方ない
クラスチェンジ挑戦権を持つ同種のモンスター複数名で戦い、最後まで残ったものが上位種となる
俺は緊張しながら戦いに挑むのだった
……結果を言おう
俺は勝った
クラスチェンジ達成だ
キラースノウ
それが俺の新たな種族
危険性が明らかに増した名前だ
そして、使える技を知って興奮した
無意味に思えた技、「白い吐息」も「白い息吹」へと強化
この技は、相手全体に対して氷属性の魔法攻撃を行うものだ
さらに、これはキラースノウの主力攻撃だった
ただの無駄な行動だった技が、俺の主力となる
こんな熱い展開があったとは
まあ、俺は氷属性だから熱いのは苦手だけど、熱いのは心で、心が熱くなるのは好きだから問題ない
俺は気持ちを新たに、頑張ってさらに上を目指そうと気合を入れた