俺はいわゆる雑魚モンスター
この世界で新米戦士の経験値となるために生まれてきた存在
Lv1からLv3くらいの戦士が俺を狩るのだ
ああ、安心してくれ
俺は倒されても蘇る
そう設定されているからな
当然のことながら、俺に負けるようなことがあってはお話しにならないので、冗談みたいに弱く設計されている
その弱さの原因のひとつが、「白い吐息」という行動だ
文字通り、俺は白い吐息を放つ
以上
「しかしなにもおこらない」、というやつだ
超雑魚モンスターにありがちな、無意味な行動
万が一にも、新米戦士を戦闘不能にしないようにこうなった
他にも「たいあたり」とかあるのだが、4割の確率で「白い吐息」を発動する
俺に負けるような新米戦士は、もう向いてないどころか、わざと負けたとしか思えない
俺がいかに弱いかがわかってもらえたと思う
さて、そんな日々を送っていた俺だが、チャンスが訪れた
戦士はモンスターを倒すことで経験値を取得し、レベルが上がる
しかし、モンスターは相手にダメージを与えただけで経験値を得られるのだ
それは倒されても引き継がれる
ただし、レベルが上がっても強さは変わらない
途中までは……
モンスターは一定レベルに達すると、クラスチェンジへの挑戦権が与えられる
上位モンスターへ進化できるというわけだ
俺の種族名をまだ言ってなかったな
俺はスノウボール
氷属性の最弱モンスターだ
いや、雪玉じゃないぞ
雪玉みたいな見た目の真っ白い球状のモンスターだ
大福なんて呼ばれることもある
そして、俺はついにクラスチェンジに挑戦可能になった
失敗すれば経験値はパー
最初からやり直しだ
上位モンスターが量産されたら困るから、これは仕方ない
クラスチェンジ挑戦権を持つ同種のモンスター複数名で戦い、最後まで残ったものが上位種となる
俺は緊張しながら戦いに挑むのだった
……結果を言おう
俺は勝った
クラスチェンジ達成だ
キラースノウ
それが俺の新たな種族
危険性が明らかに増した名前だ
そして、使える技を知って興奮した
無意味に思えた技、「白い吐息」も「白い息吹」へと強化
この技は、相手全体に対して氷属性の魔法攻撃を行うものだ
さらに、これはキラースノウの主力攻撃だった
ただの無駄な行動だった技が、俺の主力となる
こんな熱い展開があったとは
まあ、俺は氷属性だから熱いのは苦手だけど、熱いのは心で、心が熱くなるのは好きだから問題ない
俺は気持ちを新たに、頑張ってさらに上を目指そうと気合を入れた
12/7/2025, 11:15:21 AM