ストック1

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10/12/2025, 12:19:44 PM

わかってたよ
どこまでも行けるような気がしたけど、こうなるに決まってる
気持ちが大きくなってたんだと思う
じゃなかったら、戦おうなんて考えなかったはず
うっかり四天王最強を倒したものだから、魔王にだって勝てる、なんて思い上がってしまった
その四天王最強を従えるくらい圧倒的な強さだなんて、考えるまでもなくわかるのにね
魔王を倒せる実力の人間は、魔王との戦いで聖剣が現れ、聖剣によって魔王を滅ぼす
きっと聖剣に選ばれる、現れてくれる、なんて根拠のない自信を持った私が悪い
実際には、聖剣が出る間もなく簡単に致命傷を受けた
戦いにすらならなかった
仲間の顔が浮かぶ
ごめん、みんな
私はもう、ここまでみたい
せめて、魔王にひと傷くらいはつけてやりたかったけど、力の差がありすぎた
せめて、聖剣に選ばれる勇者が、すぐにでも現れることを祈ろう


…………
……


「どうした?
怖い夢でも見たか?」

いつの間にか眠っていた
目を覚ました私の顔を、お父様が心配そうに覗く

「うん
私が別の誰かで、その誰かがお父様に挑んで、負けて……死んだの」

今思い出しても、嫌な夢
夢とはいえ、お父様を殺そうとするなんて
夢とはいえ、お父様に殺されるなんて
でもきっと、お父様はただの夢だと笑い飛ばしてくれる
そう思ったのに、お父様はなぜか真剣な表情になった

「そうか
そろそろ頃合いか
……始めよう」

私にはその言葉の意味がわからなかった
始める?
何を?
お父様は私を、城の中の入ってはいけないと言われていた部屋へと連れてきた
そこは、夢で見た部屋
違うのは、大きな魔法陣が描かれていること

「ここは、何?」

お父様は答えない
私を見ながら、悲しそうな顔をして、なにかの魔法を発動した

「う、ああああぁぁぁぁ!」

頭が痛い!
何かが頭に入り込んでくる!
これは……記憶?
私は……そうだ、私は……

「……気分はどうだ……?」

「最悪……
あなたを殺そうとしたのに、転生させられて、娘として育てられるなんて……」

なんの目的で、魔王はそんなことをしたの?

「すまぬ
他に方法がなかった
我を倒せるほどの人間がいなかったものでな
長らく魔王城の魔素を浴び、強靭な肉体を得た今の君なら、我を葬る勇者となれるはずだ」

魔王は自分を倒す存在を育てた?
なぜ?

「そんなに死にたいなら、自害すればいいでしょ
なんでそんな回りくどいことを?」

「死ねないのだ
何度も死のうとした
しかし、魔王の血統がそれをさせぬ」

魔王によると、彼は人間と争いたくはなかったそうだ
しかし、魔王の血には歴代魔王の怨念が宿るらしい
魔王はそれに抗うことはできず、意思とは無関係に人間を滅ぼそうとする
だから子を作らず、自分で魔王の血筋を終わりにするため、勇者を待った

「だが勇者は現れなかった
だから、我のもとへたどり着いた君の遺体を作り変えて転生させ、ここまで育てた
素質はあるはずだと思って、な」

魔王の言っていることは、たぶん本当のこと
納得行かない部分もあるけど、私は魔王と再び戦うことにした
本当は、魔王を救いたい気持ちもあったけど、きっとそれは叶わないことなんだ
私ができることは、せめて、魔王の望み通りに殺すこと

「……わかった、私があなたを殺す」

「うむ、感謝する」

そう言うと魔王は私に、かつての愛剣を渡してきた
こうして、戦いの火蓋は切って落とされる
何度か打ち合って思う
あの頃とは違う
私は互角に魔王と戦えていた
体に力がみなぎるのを感じる
そして、運命の時は来た
私の持つ剣が輝き、聖剣へと変貌した
それをきっかけとして、私は一気に優勢となる
魔王は防ぐので手一杯
私は攻め手を強め、一瞬の隙を逃さず、致命の一撃を魔王に喰らわせた
魔王の体が力なく崩れ落ちる

「勇者よ、改めて、感謝する
我が呪われた運命も、これでようやく、終わる」

魔王は心底安堵した表情で、息も絶え絶えに言葉を発する
私は悲しい気持ちが溢れてきた
娘として育てられてきて、この人の優しさを知っていたから
だからせめて、最期は娘として接してあげよう

「さよなら、お父様
ゆっくり休んでね」

魔王は柔らかな笑みを浮かべると、そのまま眠るように亡くなった




「はい、勇者と魔王の物語はこれでおしまい」

「おかあさん、ゆうしゃもまおうも、すごくかわいそうだったね」

「そうだね
でももしかしたら、魔王はどこかで生まれ変わって、新しい人生を始めたかもしれないよ?」

「うん!
ゆうしゃだってうまれかわったもんね!
まおうはいま、どこにいるんだろう?」




「死ぬための人生なんて、悲しすぎるよ!
魔王城の魔素が私の体内にあるなら、魔王の転生魔法だって使えるはず!
うまく行けば血の呪いだって浄化できるかもしれない!
いや、してみせる!
絶対に生まれ変わらせるんだ!
今度は私がお母さんだからね!
転生したら、あなたの物語を話して聞かせてやる!
こんどこそ幸せにするから、さっさと可愛い赤ちゃんに戻ってよね!」

必死に魔力を練り続けて、限界が近いと思った瞬間、魔王は赤ちゃんの姿になっていた
赤ちゃんは大声で泣いている
ああ、よかった
うまくいったんだ
私は魔王だったその子を抱いて、話のわかる魔族に成り行きを話すと、城を出て人間界へと向かった
今度こそ、幸せになってもらわないと
いや、幸せにするんだ!

10/12/2025, 2:46:30 AM

未知の交差点はたくさんある
数えるのもバカバカしいほど
私の知っている交差点の数なんて、この世の交差点の1%にも満たない
が、しかし
たまたま行く機会のあった街に、お気に入りの景色の交差点を発見した!
積極的にではないけれど、なんとなく景色のいい交差点を求めていた私にとって、かなり理想の姿だった
四つ角にビルが高く建ち、歩道が広く、各方向の先も、ごちゃついた感じがしないキレイに整列したビル群がある
そうだよ、これだよ!
私が見たかった交差点は!
幸い、ここは自宅の最寄り駅から1時間ほど電車に乗ればたどり着ける
つまり、見たいと思った時、暇ならそんなにハードル高くなく行けるということ
この世に無数にある中で、こんな素晴らしい交差点へ簡単に行けるというのは、かなり嬉しい
もしここが海外だったり、国内でも飛行機や新幹線で行かなければならない場所だったら、気軽な気持ちで向かえなかっただろう
どうか、この交差点の景色がいつまでも続いてほしい
心からそう思う

10/10/2025, 10:35:36 AM

さて、こちらの花畑をご覧ください
様々な花が植えられているにもかかわらず、お互い他の花の栄養を奪わず、ほどよく補給しています
花の並びも、綺麗に整列しており、調和が取れていますね
それもこれもこの一輪のコスモスがそのリーダーシップにより、花畑に秩序をもたらしているからなのです
荒れた花畑や花壇にコスモスを植えれば、そこに植えられた花々は争うことをせず、穏やかに助け合いながら咲き誇ります

一方、あちらの花畑を見てみましょう
枯れていたり、弱っている花や、無駄に大きく育った花が見えます
弱い花は栄養を奪われ、強い花だけが生き生きとしている
まさに弱肉強食
そして強い花は乱雑に、荒々しく咲き誇っていますね
世紀末的な光景が広がる花畑です
こんな状況になってしまっている原因はあの花が咲いているからでしょう
あれこそ、破壊と混沌をもたらす一輪の花
カオスです
一度植えるとどんな楽園的な花畑や花壇でも、一瞬にして地獄と化してしまいます

では、コスモスとカオスを同時に植えるとどうなるでしょう?
最初は拮抗し、秩序あるコスモスのテリトリーと、世紀末的なカオスのテリトリーが形成されます
ただ、すぐに団結力のあるコスモス側がテリトリーを拡大
自己中心的なカオス側の花では団結できず、弱肉強食なせいで戦力も少ないため、すぐにコスモス側が勝利を収めるのです
これにより調和と秩序の花畑が誕生する、というわけですね
そして敗北したカオスはなんと、コスモスへと変異してしまいます
不思議ですね
このあたりはまだ研究中で、わかっていないことが多いのですが、メカニズムさえわかれば世界平和実現につなげられるとも言われており、一日も早い解明が期待されています

10/9/2025, 11:24:35 AM

『「俺と恋人のフリ、してくんない?」
憧れの彼と、秋限定の恋人関係に
ひとときの夢、そう思っていたけど……
(中略)
この秋、きっとあなたも恋をする
映画「秋恋」10月×日ロードショー』

……いやぁ、全く惹かれねぇー
そもそも恋愛ものは私、苦手だし
せっかく誘ってもらって悪いんだけど、ちょっと無理かな

「やっぱダメかぁ
一回見れば恋愛ものもハマると思うんだけどね」

食わず嫌いなのは認めるけどね
ただ、私はイケメンとヒロインの恋愛模様よりも、筋肉モリモリマッチョマンが派手なアクションで殴る蹴る爆破する映画のほうがキュンキュンするんだよ

「まあ、そうだよね
今までの付き合いでわかるよ
部屋にアーノルド・ウィリスのポスター貼ってあったし」

私の秋の恋はシルベスター・セガールの『last dying 3』に捧げるよ
今回は不可能なミッションに挑むってさ
毎回不可能なミッションに挑んでは成功させてるけど

「なんとか恋愛映画も見てほしいなぁ
そうだ、あたしが一緒に普段見ないアクション映画に付き合う代わりに、咲も私が秋恋を見るのに付き合うってのはどう?
お互い世界が広がるかもしれないし!」

いやぁ、私はひとりでも映画館でノリノリで見られるタイプの人間だから

「たまには友達と見るのも、一味違った楽しみがあるかもよ?
感想言い合ったり、解説したりさ」

うーん、見終わって話せる人がいるのは喜ばしいことだけど……代わりに恋愛映画見るのかぁ

「なんでもものは試しでしょ!
私もアクション映画にハマるかもしれないし!」

そうだなぁ、わかったよ
うん、よし、秋恋、一緒に見に行く!
じゃあ、そうと決まれば早速二日分の予定をたてよう


後日



「いやぁよかったね、秋恋
この前のlast dying 3も、想像してたよりずっと面白かったよ」

……

「あれ、どうしたの?
あんまり合わなかった?」

いや、あの、恋愛映画ってみんなあんな感じなの?

「どんな感じのことを言ってるか知らないけど、だいたいあんな雰囲気かな」

なんか、中盤辺りから刺激の強い恋愛オーラが襲い掛かってきて、なんかよくわからない感情になった

「……ああ、たぶん、アクション映画とは違う方向でキュンキュンしたんだと思うよ?」

あれが真の胸キュンってやつだったのか
なんて恐ろしい
私の心が終始破裂寸前だった

「ハマれそう?」

ハマれそう

「なら、あたし的には付き合ってもらったかいがあったね」

私はこれから筋肉モリモリマッチョマンに加え、ラブでスイートな映画もチェックすることにするよ

「私もアクション映画、ちょっと色々調べてみよっかな」

お互い、趣味が広がったね
私は今日は寝られる気がしない

「あたしは気持ちよく寝られそうだよ
なにせ同志が増えたからね!」

ま、アクション映画が私の最推しであることには変わりないけどね
恋愛映画もいいものだってわかってよかったよ

10/8/2025, 11:02:57 AM

愛する、それ故に俺はこの場から退かない
愛する、それ故に俺はお前の意志に媚びない
愛する、それ故に俺は自分の身を省みない
友としてお前を止める
お前からの愛を失っても、俺が力尽きることになろうとも
思い出せ
お前がかつて目指したことを
お前がやりたかったのは、他者を傷つけるようなことではなかったはずだ
手段を選ばず悪を断つなんていう、傲慢な行動をお前は望んでいなかっただろう
俺がお前を引き戻してやる
なすべき方法で、あるべき姿を取り戻せ
お前は闇の中に堕ちたような気分だろうが、どんな闇の中でも、探せば光は見つかるんだ
その光を掴み取れ
お前ならきっとできる
見つからなくても、仲間が光まで引き上げてくれるはず
だから、こんなことはもうやめよう
お前には、助けてくれる存在がたくさんいるじゃないか
みんなの力を借りるんだよ
そうすれば、見えてこなかった道が見えてくる
お前は、ひとりじゃないんだ

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