僕は人生を、土砂降りの中歩んでいる
逃げ出したいけど、逃げることはできない
投げ出したいけど、それもできない
それらをしたところで、もっと苦しむだけだから
だからといって、立ち向かっていけるほど僕は強くはないし、うまく行くとも思えなかった
このままひとりで、心に豪雨を受けたような苦しみに苛まれ続けるのか
そんな絶望に包まれる
そんな中で、君は僕に気付いてくれた
雨の中、座り込んで震える僕に手を差し伸べて、一緒に戦うと言ってくれた
そのおかげで僕は、苦しくても、逃げ出したいとか、投げ出したいとか、そんなことを考えず、立ち向かえる力を手に入れる
もうひとりじゃないし、怯える必要もない
この雨を止ませよう
君となら、それができる
長い間土砂降りの人生だったけど、降り続く雨がついに止んで、その先で君と見た虹は、とても輝いていて、美しかった
私は夜空を駆ける
リヤカーに乗って
楽だから私もサンタみたいにソリに乗りたいけど、あれは高い
あのおじいさん、補助金出てるからね
しかもトナカイに引っ張ってもらってるし、快適そうで羨ましいよ
大してお金のない私はリヤカーなのさ
とはいえ、真面目に働いて稼いでるから、箒じゃなくて済んだけどね
あれの乗り心地は最悪だった
絨毯も、安い割には物も少し乗せられるんだけど、ちょっと乗り心地悪いんだよね
その点、リヤカーはカスタマイズすれば乗り心地は、よくはないけど特段悪くもないって感じにはなるし、物もけっこう運べるからね
ああ、でもいつか自家用ソリでドライブしたいな
私の目標のひとつでもあるんだ
そういえば、前に観光ツアーで乗った馬車
あれすごいよかったなあ
まあ、よほどのお金持ちじゃない限り、個人で所有なんて不可能だけど
それにしても、夜空を駆けるのは気持ちがいいよね
休日の夜はやっぱり空のドライブが最高
夜景もきれいだし
週に一度のリフレッシュには最適だよ
お前は知らないだろう
俺があるひそかな想いを持っていることを
お前に勝利するという執念
表には出していないが、それが俺のひそかな、そして強い想いだ
お前に完敗したあの日から、俺は研究をし続けた
どうすればお前に勝てるのかを
今日、リベンジしてやる
あの日、俺はみんなの前で渾身のネタを披露したのだ
室内は笑いの渦に包まれ、俺の心は満足感でいっぱいだった
そう、お前のハテナで埋め尽くされたような顔を見るまではな
あの時のお前の顔は、「どこが面白いんだこれ?」と言わんばかり
俺は衝撃を受けた
他の友人はみんな笑っているのに、お前が笑わなかったという、たったそれだけの事実に悔しさが爆発した
だから、絶対にお前を俺のネタで笑わせたいと思ったのだ
今度はあの時とは状況が違う
正真正銘、一対一だ
お前が笑わなければ、誰も俺のネタで笑ってくれる者はいない
ここまで自分を追い込み、全力を出し切る
これで笑わなかったら俺はもう、お前をネタで笑わせられるほどのセンスはなかったのだと諦めがつく
それくらいの気持ちで練ったネタだ
お前の笑いのツボを研究し尽くした渾身のネタ、今こそ喰らうがいい!
「ブーメランとして使えそうな都道府県トップ5ー!まずは第五位ぃー……」
正直、つまらないとは思わないが、自分ではこのネタがそこまで面白いとは思えない
しかし、お前は好きなはずだ、こういうネタが!
これで沈黙ならもうお前のツボは俺の理解の範疇を超えている
というか、好きなはずだとか言ってるけど実は自信ない!
そんな俺の気持ちに反して、お前はあっけなく爆笑し始め、用意したフリップを出すたびにヒーヒー言い、最後は腹を抱えて「やめてくれ、笑い死ぬ」などと言っていた
やった、ついに勝ったのだ
俺の笑いは間違っていなかった
悔しさをバネに、俺は笑いの扉をこじ開けられたのだ
こうして俺は、あの時の雪辱を果たすことができ、ネタは大成功で幕を閉じた
あなたは誰?
私と同じ姿をしているあなたは、いったい誰なの?
なぜ私の邪魔をするの?
私の望まないことばかりをして、困らせないで
同じ姿をしているのに、あなたの内面は私に全然似ていない
もう、どこかへ行って
これ以上、私の人生をかき乱さないで
こんなこと、もうたくさんなんだから
あなたは誰?
そんなわかりきったことを聞くの?
私は私
私はあなた
同じ姿をしているのは当たり前
だって、自分自身なんだから
邪魔なんてしてないよ
望まないことだって、本当に思ってる?
あなたは今、誰の目からも困っているようには見えないよ
内面が全然似ていない?
それはあなたが自分に嘘をついて、本心を、欲望を覆い隠しているからそう思うんだよ
私とあなたは同じ存在
だから心も同じ
私があなたの望みを叶えてあげてるのに、どこかへ行ってなんてひどいな
私が本心を、欲望をさらけ出している時、あなたはとても気持ちよさそうだったよ?
だってこれは、あなたが心の底から望んでいたことなんだから
10年前、未来の自分に宛てた手紙を誰かに預け、時が来たら持ってきてほしい、と頼んだことを思い出した
預けた相手が覚えていれば、今年来るはずだ
けど、誰に預けたのかを覚えていない
同級生の誰かだったはずだが、すごく仲のいい相手ではなかったと思う
なので、今の所は手紙の行方はわからない
相手が覚えていなかったら、もう届くことはないだろう
その時はもうしょうがない
そんなに仲がいいわけではない相手に預けた私が悪いのだ
そんなことを考えていたら、見知らぬ番号から電話がかかってきた
電話を取ると、中学時代の同級生だった
卒業以来、連絡なんて取ってなかった相手だ
もしや、と私は思ったが、やはり思った通り、手紙を預けた相手だった
約束を守ってくれた上に、私の連絡先を調べてくれたようだ
覚えてくれていたのか
後日、同級生が手紙を持って私の自宅へ来てくれたので、一緒に読むこととなった
内容はベタなもので、今、何をしているかとか、幸せかとか、夢はかなったかとか、結婚したかとか、そんなことが書いてある
そしてその中で、なぜそこまで仲のよくない同級生に手紙を預けたかも書いてあった
中学時代、あまり接点のなかった同級生と、これをきっかけに友人関係を築いてみないか、面白いことになりそうだし、という内容
全然覚えていなかったが、そういうことらしい
同級生はせっかくだし、友人になってみるか?と聞いてきた
私は、そうだな、せっかくだしと返答
さっそく、都合のいい日に遊びに行くこととなった
少し話して、たまたま同じ趣味を持っていることがわかったのだ
新しく友人ができたのは、いつ以来だろう
10年前の自分に感謝したい