「空が青いのはね、赤いと人が興奮してそこかしこで争い始めて、すぐ滅亡するから、落ち着かせるために青いんだよ」
よく、君はそんなバレバレの嘘話をするよね
「私はね、昔、勇者の子孫に会ったんだよ
日本に忍者の末裔っているでしょ?
あれの西洋版」
勇者の子孫とは、壮大な嘘だな
自分でバレバレだとわかっているだろうに、君がなんでそんな嘘をつくのか
面白いことを思いついたから、誰かに発表したい、とかかな
ちなみに、僕は楽しく聞いている
「で、昔の空は真っ白かったんだって
でもある日、魔王的な奴が武力を使わず人類を排除するために、空を赤く染めたんだよ
その結果、さっきも行ったとおり、人々は興奮したり、怒りやすくなって、争い始めたってわけ
で、滅亡の危機に陥ったらしいよ」
魔王、自分では手をくださず、リスクを避けて自滅を狙うとは、策士だな
戦いのなんたるかをわかってらっしゃる
「そんな時、どこからか聖剣を携えた勇者が現れて、謎のパワーで空を青く染めたら、みんな冷静になって争いをやめたそうだよ」
謎のパワーってなんだよ
そこは考えてないんだな
「さらに仲間を集めて、すぐさま魔王城に乗り込んだんだ」
まさか魔王もそんなあっさり策を破られるとは思わなかっただろうな
しかも油断していたのか、即刻乗り込まれちゃってるよ
「その後は早かったってさ
勇者が仲間と連携して戦って、十数分で魔王を倒したんだよ」
十数分だってわかってるのか?
いつの時代の話だっけ?
「それで、世界は一時の平和を取り戻したと
そして、勇者の名前から、空と同じ色をブルーって呼ぶようになったって話
ちなみに、レッドは魔王の名前ね」
これで話は終わりらしい
すごい荒唐無稽の極みみたいな話だけど、僕はけっこう好きだな
少し気になったので、なんでそんな嘘話を僕にするのか、聞いてみた
「嘘じゃないよ、歴史的事実だよ
それはともかく
君、普段退屈そうにしてるからさ、面白い話でも聞かせて、ちょっと楽しんでもらおうかと思ってね」
どうやら、退屈な僕を楽しませるためのやさしい嘘だったようだ
確かに、僕は日々、退屈にしていることが多い
そんな毎日の中で、君の話は楽しくて、心が潤う
今度は、なにか、僕が君を楽しませられる話を考えようかな
君は退屈してなさそうだけどね
君のことがとても眩しい
くすんだ俺と違って、強く輝いている
心の瞳をとじてしまえば、見ずにいれば楽なのだろう
だが俺は、瞳を見開いて君を見る
君の今の姿こそ、俺が目指すところだからだ
君を見ている限り、くすんでしまった俺でも、輝けるのだと思うことができる
そのおかげで、俺は苦しくても上を目指せるんだ
だから友よ、待っていてくれ
必ず君に追いつく
いつか君のとなりに立てるように、肩を並べられるように、俺は頑張ることをやめないから
痛いほど眩しくても、瞳をとじたりせず、君を標にしながら、たとえくすんでいても、磨き続ければ輝けるということを証明するよ
あなたは「何もいらないよ」、なんて笑いながら言ってましたけどね、そうはいきませんよ
私は是が非でも、たとえ天地逆となって西からライジングサンしてもあなたへの贈り物を渡しちゃいますよ!
「そんなの悪いよ」じゃないんです
これはね、私のために、私が勝手にやることなんです
私がただ、あなたに贈り物がしたいだけなんですよ
そこにあなたが悪いと思ったり、恩を感じたりする隙間なんてものはありません!
断言します、ありません!
というか、お願いします
私はあなたへの贈り物がしたくてしたくてたまらないんです
私の望みを叶えるために一役買ってくれませんか?
ほんと、もらってくれたら、恩に着りますから!
ん?ここまで言ってもまだ悪いと感じてるんですか?
じゃあもうこれは強制です、命令です
私は贈り物がしたいので、黙って受け取りなさい!
……ようやく受け取ってくれましたね、ハァハァ、ゼーゼー
まったく、なんで贈り物するだけでこんなに苦労しなきゃならないんですかもう!
それじゃあ、最後にこれだけ言っておきますよ!
ハッピーバースデイトゥーユー!
この深く、日中でも暗い広大な森は、羅針盤で方角を見なければ抜け出せないし、目的地へもたどり着けない
コンパス?
いやいや、羅針盤って言ったほうがかっこいいじゃん
私たちは、この羅針盤を命綱にして、財宝伝説のある遺跡を探していた
何度も迷いそうになったけど、その度に羅針盤で方角を確認、古びた地図と照らし合わせ、修正していった
そして私たちはついに遺跡を発見するのだった
フハハ、財宝ゲットだぜ
あ、いや、もちろん調査目的だし、財宝も歴史的価値に着目しているんだけどね、フヘへ
まあ、遺跡を発見しただけだし、まだ気が早いけど
私たちは警戒しながらも、早速、遺跡の調査を始めた
探索を進めると、すぐに財宝が眠っていると思しき部屋に当たった
どうやら罠の類は無いようでホッとしたけど、当時は荘厳であっただろう見た目の割に中は単純な造りだったな
私は仲間とともに、明らかに財宝入ってますアピールをしている、とてもわかりやすい豪奢な、長い時を経たとは思えないきれいな宝箱を、錠を突破して開けた
中には、え?文字の彫られた石版?
思ってたのとは違うけど、絶対に歴史的価値の高いものなので、慎重に取り出し、解読してもらった
曰く
『こんなところに一人で来る愚か者はいない、というか、たどり着けるわけがないので、君たちは仲間とともにここまで来たのだろう
さて、君たちはここに財宝目当てで来たと思う
しかし、ここには財宝なんて何もない
なぜなら、仲間とともに達成した事実こそが、君たちにとっての宝⸺』グチャッ!
最後のは私が羅針盤を地面に叩きつけ、破壊した音である
財宝がないって?
あはは、なめてるのかな?
言いたいことはわかるけど、財宝あっての達成感でしょうが!
なんにもない遺跡に仲間と一緒に苦労してたどり着いて、よかったねーてなるかあ!
怒りに震える私だったが、ふと、自分が致命的なミスをしたことに気づいた
命綱の羅針盤、壊しちゃった
待って、私たち財宝もない遺跡に来てこのまま遭難して死ぬのか!?
犬死にならぬ無駄足死にじゃん!
などと慌てていると、仲間が自分の懐から羅針盤を取り出した
あっ、全員一つずつ持ってるんだった
私以外の仲間は全員冷静に、とても冷静に石版を持ち帰るべく準備をしている
あれえ?財宝に熱意があったの私だけ?
みんな淡々と作業してるんだけど
こうして、私だけがとてつもなく疲労した状態で、ふざけた遺跡をあとにするのであった
この世は一方通行だ
人は皆、過去に、今に、別れを告げ、明日に向かって歩く
でも、あの時こうしていればとか、過去を変えられればと思うこともあるだろう
私もそうだ
深く後悔したことに対し、戻ってやり直せればと考えたことは、数えるのも馬鹿馬鹿しいくらいにある
だが私はある時、不思議な何者かによって、時間を遡る力を手に入れた
この力で、今よりも幸せになれるかもしれない
そう思い、後悔を解消するため、力を使った
そうして運命を変えるために奔走した結果、私はもとの運命よりも不幸な結果へ至った
こんなことになるとは予想外だ
もう一度やり直そう
今回は考えうる最善の行動をとりながら、万全の態勢で動いた
だが、私の努力を嘲笑うように、私はまた不幸に……いや、不幸を通り越して絶望的な状況に追いやられる
その後も何度もやり直したが、元々の運命よりも幸せな状態にはならなかった
最後に私は、覚えている限り最初と同じ行動をとることにした
一番気を使い、非常に不安だったが、おかげで私は元の運命に戻すことに成功する
もう、あんな思いをするのはごめんだ
この力は捨てることにしよう
時間を遡っても、幸せは掴めない気がする
力を捨てた私に、ある考えが浮かんだ
もしかしたら、私は充分に幸せだったのかもしれない
ただ、そのことに気づいていなかっただけで
あまりに後悔の多い私に、あの力を与えてくれた何者かは、後悔するとしても、自分の進んだ道を信じろと、そう言いたかったのだろうか
この世は一方通行だ
人は皆、過去に、今に、別れを告げ、明日に向かって歩く
でも、あの時こうしていればとか、過去を変えられればと思うこともあるだろう
私もそうだ
だが今は、そんなふうに思いたくなってしまうような過去も、決して無駄ではないと思えるようになった