ストック1

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「空が青いのはね、赤いと人が興奮してそこかしこで争い始めて、すぐ滅亡するから、落ち着かせるために青いんだよ」

よく、君はそんなバレバレの嘘話をするよね

「私はね、昔、勇者の子孫に会ったんだよ
日本に忍者の末裔っているでしょ?
あれの西洋版」

勇者の子孫とは、壮大な嘘だな
自分でバレバレだとわかっているだろうに、君がなんでそんな嘘をつくのか
面白いことを思いついたから、誰かに発表したい、とかかな
ちなみに、僕は楽しく聞いている

「で、昔の空は真っ白かったんだって
でもある日、魔王的な奴が武力を使わず人類を排除するために、空を赤く染めたんだよ
その結果、さっきも行ったとおり、人々は興奮したり、怒りやすくなって、争い始めたってわけ
で、滅亡の危機に陥ったらしいよ」

魔王、自分では手をくださず、リスクを避けて自滅を狙うとは、策士だな
戦いのなんたるかをわかってらっしゃる

「そんな時、どこからか聖剣を携えた勇者が現れて、謎のパワーで空を青く染めたら、みんな冷静になって争いをやめたそうだよ」

謎のパワーってなんだよ
そこは考えてないんだな

「さらに仲間を集めて、すぐさま魔王城に乗り込んだんだ」

まさか魔王もそんなあっさり策を破られるとは思わなかっただろうな
しかも油断していたのか、即刻乗り込まれちゃってるよ

「その後は早かったってさ
勇者が仲間と連携して戦って、十数分で魔王を倒したんだよ」

十数分だってわかってるのか?
いつの時代の話だっけ?

「それで、世界は一時の平和を取り戻したと
そして、勇者の名前から、空と同じ色をブルーって呼ぶようになったって話
ちなみに、レッドは魔王の名前ね」

これで話は終わりらしい
すごい荒唐無稽の極みみたいな話だけど、僕はけっこう好きだな
少し気になったので、なんでそんな嘘話を僕にするのか、聞いてみた

「嘘じゃないよ、歴史的事実だよ
それはともかく
君、普段退屈そうにしてるからさ、面白い話でも聞かせて、ちょっと楽しんでもらおうかと思ってね」

どうやら、退屈な僕を楽しませるためのやさしい嘘だったようだ
確かに、僕は日々、退屈にしていることが多い
そんな毎日の中で、君の話は楽しくて、心が潤う
今度は、なにか、僕が君を楽しませられる話を考えようかな
君は退屈してなさそうだけどね

1/24/2025, 11:04:54 AM