この深く、日中でも暗い広大な森は、羅針盤で方角を見なければ抜け出せないし、目的地へもたどり着けない
コンパス?
いやいや、羅針盤って言ったほうがかっこいいじゃん
私たちは、この羅針盤を命綱にして、財宝伝説のある遺跡を探していた
何度も迷いそうになったけど、その度に羅針盤で方角を確認、古びた地図と照らし合わせ、修正していった
そして私たちはついに遺跡を発見するのだった
フハハ、財宝ゲットだぜ
あ、いや、もちろん調査目的だし、財宝も歴史的価値に着目しているんだけどね、フヘへ
まあ、遺跡を発見しただけだし、まだ気が早いけど
私たちは警戒しながらも、早速、遺跡の調査を始めた
探索を進めると、すぐに財宝が眠っていると思しき部屋に当たった
どうやら罠の類は無いようでホッとしたけど、当時は荘厳であっただろう見た目の割に中は単純な造りだったな
私は仲間とともに、明らかに財宝入ってますアピールをしている、とてもわかりやすい豪奢な、長い時を経たとは思えないきれいな宝箱を、錠を突破して開けた
中には、え?文字の彫られた石版?
思ってたのとは違うけど、絶対に歴史的価値の高いものなので、慎重に取り出し、解読してもらった
曰く
『こんなところに一人で来る愚か者はいない、というか、たどり着けるわけがないので、君たちは仲間とともにここまで来たのだろう
さて、君たちはここに財宝目当てで来たと思う
しかし、ここには財宝なんて何もない
なぜなら、仲間とともに達成した事実こそが、君たちにとっての宝⸺』グチャッ!
最後のは私が羅針盤を地面に叩きつけ、破壊した音である
財宝がないって?
あはは、なめてるのかな?
言いたいことはわかるけど、財宝あっての達成感でしょうが!
なんにもない遺跡に仲間と一緒に苦労してたどり着いて、よかったねーてなるかあ!
怒りに震える私だったが、ふと、自分が致命的なミスをしたことに気づいた
命綱の羅針盤、壊しちゃった
待って、私たち財宝もない遺跡に来てこのまま遭難して死ぬのか!?
犬死にならぬ無駄足死にじゃん!
などと慌てていると、仲間が自分の懐から羅針盤を取り出した
あっ、全員一つずつ持ってるんだった
私以外の仲間は全員冷静に、とても冷静に石版を持ち帰るべく準備をしている
あれえ?財宝に熱意があったの私だけ?
みんな淡々と作業してるんだけど
こうして、私だけがとてつもなく疲労した状態で、ふざけた遺跡をあとにするのであった
1/21/2025, 11:07:16 AM