嫌なことが続いたあと、
外に出たら雨が降っていた
今日は傘を持ってきていない
こんなところでまで嫌なことが起こるのか
スマホで天気予報を見るに、
どうやらこの雨はまだまだ止まないようだ
しかたがないので濡れて帰ることにした
思いの外優しく柔らかい雨だった
打たれて冷たいはずなのだが、
どこか温かみを感じるような雨だった
そのうち雨に慰められているような、
そんな感覚になり、
まあこんな嫌な日くらいたまにはあるさと
心を切り替えて、
私は帰路につくのだった
一筋の光を見失わないように
暗闇の中で目を凝らす
光が目の前から消えてしまわないように
必死に追い続ける
その光に手を触れることができれば
きっと視界は明るさを取り戻す
そして触れた光を育て
もっと明るくしていくことができる
そう信じて光へ手を伸ばし続ける
暗闇が晴れることを望みながら
明るく輝く未来を求めて
公園で中年くらいのスーツを着た人が
ベンチで疲れきった様子でコーヒーを飲んでいた
哀愁を誘うその姿に
僕は毎日の勉強で疲れ果てた自分を重ねた
なんとなくその人の隣に座り
「大丈夫ですか?」と声をかけた
スーツの人は訝しげにこちらを見たあと
「君こそ大丈夫か?なんだか疲れていそうだ」
と逆に心配してくれた
僕は「大丈夫じゃないかも」と答え
自分が日々の勉強で疲労困憊であること
友達と遊ぶ機会も減って
距離ができてしまったことを話した
スーツの人は「それはよくないな」と言い
自分の過去について喋りだす
自分も昔は遊ぶ時間を削ってまで
必死にたくさん勉強して、
いいところへ進学し、無事就職もした
けれど勉強はできても、
仕事までは順調には行かず、
自分よりも勉強してきておらず、
友達とたくさん遊んできたであろう同期たちに
次々と実力で抜かされていったのだと
その人が言うには、
遊びを犠牲に勉強ばかりしても、
社会で自分を活かすのは難しいらしい
人と交流したり遊んだりすることも大事なのだそうだ
「それぞれのバランスが大事だって、
当時は気づかなかったんだ
後悔してるよ
君はまだ軌道修正できるから、
がんばって勉強しながら、
友達と遊んだり、好きなことにも打ち込むといいよ」
それを聞いて僕は、
自分自身の在り方をもう一度考えようと思った
今までの僕は必死になりすぎていた気がする
スーツの人に感謝した僕はお礼を言って、
「がんばってください
きっとあなたもまだ、
軌道修正していい方向に行けると思います」
と付け加えた
「ありがとう
君を見てたら、なんだかがんばれる気がしてきたよ」
そう言うとスーツの人は、
少し元気になった様子で手を振りながら去っていった
僕が動けば
それに合わせて同じ動きをする、鏡の中の自分
決して違えることなく
見せる表情までもが同じ存在
僕が笑うと向こうも笑う
僕がしかめっ面をしていると、
向こうもしかめっ面をしている
だとしたら、
僕が嬉しい時、鏡の中の僕も嬉しいのだろうか
僕が悲しい時、鏡の中の僕も悲しいのだろうか
同じ感情で向かい合っているのだろうか
もしそうなら、
僕は鏡の中の自分をできるだけ喜ばせたい
鏡の中の僕が嬉しそうにしているのなら、
それは僕が自分自身を喜ばせることができた
その証明になるはずだから
眠りにつく前にスマホなんて見てしまった
ちょっと気になることを思いついて
調べたくなってしまったのが運の尽き
脳が完全覚醒して眠れない
おまけに色々な考えが頭を巡り始めて
もはや眠るどころではない
これはもう徹夜も覚悟しなければならないか
明日は休日ではあるものの
しっかり丸一日予定があるのだが
どうすれば眠れるだろう
ホットミルクでも飲むか
体を温めれば眠れるだろうか
ヒーリング音楽を流そうか
ならあの曲とかがいいかもしれない
そんなことを考え続けていたら
いつの間にか朝になっていた
そんなに長く考えてたとは思えない
感覚的にそれほど時間が経っているわけがない
どうやらいつの間にか眠っていたようだ
時計を見るといつもより早く起きられていた
徹夜にならなくてよかった
予定を潰さずに済みそうだ