【ひとひら】
私は泣きながら
君に背を向けた
未練がないわけではない
ここで咲いてはいけないと
胸騒ぎがしたから
走って遠ざかった
せめて ひとひら
愛した証を置いていきたい
願わくば
君の記憶の片隅に
残っていたい
そして私は
この春に誓う
また咲くことを
唇を噛み締め
雨を待った
【風景】
今日という日を
心待ちにしていた
棘だらけの景色を
切り裂いて描いた
新たな風景
これは私の世界
芳しい
美しい
自由である
そんな私を始める
思い立ったが吉日
この世界は
私が彩ると決めた
東に照準合わせて
希望に胸を膨らませ
新たな世界へ
【フラワー】
私の胸には
花が咲いている
貴方を想って
佇んでいた
枯れてしまう前に
渡したいのに
貴方の手には
すでに大きな花束
実りのない恋だと
わかっている
それでも渡したくて
涙を拭いながら
貴方を見つめることしか
できなかった
諦めてしまった花も
そこにあるだけで
美しくて価値があるなら
この想いさえ
無駄ではないだろう
【好きだよ】
言えたなら楽になるだろうか
喉まで出かかってるのに
いつだってそれが言えない
道路脇でバーの明かりに
二人照らされながら
隣に座っていた
マイノリティな僕らが
普通のように錯覚させてくれる
新宿2丁目は仄暗いのに温かい
短くなった爪にピンキーリング
もう少しで手が触れ合いそう
失うことに慣れたと思ったのに
君を失うことが何より怖い
君がタバコを咥えるから
僕はライターを持つ手を伸ばして
火を差し出した
『好きだよ』
君は目を見開いて咽せた
それを笑う二人
君はタバコの火を消して
僕らは笑いながら抱きしめあった
怖いなりに弱いなりに
君といたいな
僕は、君が好き
【君と】
いつものカフェで
君は口角を上げながら
こちらを見据えた
アールグレイに
砂糖とミルクが
調和している
君といると
不思議と安心できる
時計の針が
チクタクと鳴る中で
君と語り合う
未来はいつも
不確かで
世間は変わらず
大人の僕らに求める
それでも僕らは
このままでいたい
そんな願望を
言葉にせずとも
理解し合っているようだった
小さなシャンデリアが
二つの紅茶を照らして
キラキラと輝いてる
まるで僕らの未来を
照らすように
煌めいていた