【好きだよ】
言えたなら楽になるだろうか
喉まで出かかってるのに
いつだってそれが言えない
道路脇でバーの明かりに
二人照らされながら
隣に座っていた
マイノリティな僕らが
普通のように錯覚させてくれる
新宿2丁目は仄暗いのに温かい
短くなった爪にピンキーリング
もう少しで手が触れ合いそう
失うことに慣れたと思ったのに
君を失うことが何より怖い
君がタバコを咥えるから
僕はライターを持つ手を伸ばして
火を差し出した
『好きだよ』
君は目を見開いて咽せた
それを笑う二人
君はタバコの火を消して
僕らは笑いながら抱きしめあった
怖いなりに弱いなりに
君といたいな
僕は、君が好き
【君と】
いつものカフェで
君は口角を上げながら
こちらを見据えた
アールグレイに
砂糖とミルクが
調和している
君といると
不思議と安心できる
時計の針が
チクタクと鳴る中で
君と語り合う
未来はいつも
不確かで
世間は変わらず
大人の僕らに求める
それでも僕らは
このままでいたい
そんな願望を
言葉にせずとも
理解し合っているようだった
小さなシャンデリアが
二つの紅茶を照らして
キラキラと輝いてる
まるで僕らの未来を
照らすように
煌めいていた
【春風とともに】
まるで春風のような人だ
君と話すと
春風のように
心地いい
お茶目で
気楽そうで
春風みたいに
漂っている
そんな君を
私が愛するのは簡単だし
誰からも愛されるだろう
春風のように
掴みどころのない君
どうかこのままずっと
ここにいてほしい
私は君を見つめて
そんな言葉を飲み込んだ
【涙】
君を想えば
いつでも目が潤む
ずっと怖くて
君のことを避けていた
だけどそれは今日で
終わりにしよう
だってやっぱり
君が好き
どんな涙も受け止めて
今日からは近づこう
そう決めたから
【春爛漫】
花弁が
君と私の間を
埋め尽くす
私の目から
溢れ出す
ぽろぽろと
雫と花弁
春の嵐のよう
掻き分けても
歩みを進めても
一向に
君との距離は
縮まらない
平然を装っても
溢れ出してやまない
この想いは
胸に大きな花を
抱いたまま
春を理由に
踏み出せば
花弁一枚くらい
届くだろうか