ー終わらせないでー
また後で書きます。
愛情
私はずっと愛されていたのに、気付こうとしていなかった。
父も母も、愛を言葉にするのがとても下手だった。
母は、学校に行ったり行かなかったりする私に、毎日お弁当を作ってくれていた。
父は働き詰めで、何かを買い与えることで愛を伝えようとしていた。
私が求めていたのは、「君はこのままで素晴らしい」とか、「いつまでも愛してるよ」といった言葉だった。
でも、それは両親からもらえなかった。
だけど、成長してから気付いたことがある。
愛情の表現方法は人それぞれだと。
だから、自分が欲しい愛だけを求めるのではなく、相手がどんな形で愛を向けてくれるかを見極めることが大切なんだ。
それは、忙しい中でも会いに来てくれることかもしれないし、
何かを買ってあげたいと思ってくれる姿かもしれない。
あるいは、毎日の何気ない言葉や、挨拶すらも愛情の一部かもしれない。
顔を見て微笑む、それも愛の証しだと思う。
今まで、誰かが不器用なりに伝えてくれたことや渡してくれたものには、
きっと愛情が詰まっているんだと思う。
時間差でも、今、その愛をきちんと受け取ってみよう。
そして、今、私たちが暮らす社会も、他の誰かが作り上げたもので溢れている。
物質的なものすら、誰かの愛情の塊だと気付くことができる。
そのことに気付くことで、もっともっと多くの愛を感じ取ることができる。
愛情を感じることで、心が満たされていく。
そして、私は今、もらった愛情をしっかり抱きしめながら、一歩一歩前に進んでいきたいと思う。
心に蓄えた愛を周りに届けることで、少しでもその愛を広げていけたら、きっと世界はもっと愛で溢れるから。
ー微熱ー
どうせすぐに冷めてしまうんだろう。
時計の針は深夜2時を指している。
うんざりするほど、彼のことを考えていた。
何時間もの間、ベッドの上で考え込み、項垂れている自分のことが急に馬鹿馬鹿しく思えた。
思わず頭を掻きむしる。
「はぁ、なんで好きになっちゃったかな…。」
と、思わずこぼれ落ちる。
これまでの経験上、こんなに強い恋愛感情を持った時に上手くいった試しがない。
彼を気になる気持ちがどうしても止められない。
LINEを開き、
「明日の夜は暇?」と彼に送ろうと思い、震えそうな手で文章を打ってみる。
「いやいや…。急すぎるか。それに、断られたらどうしよう…。」とぶつぶつ言いながら、大きなため息をついた。
ぽん。と、スマホを布団の上に投げると、急に涙腺が緩む。
ああ、この熱を持て余してしまうのが悔しい。
「好きすぎて苦しいな。」
そんな熱に魘されるような夜を繰り返して、私は何処へ向かうのだろう。
自分の中にいる強烈な感情に振り回されてることに疲れて果ててしまった。
いい加減、歳を重ねれば、落ち着くのかと思ったのに。
微熱なため息を吐き、諦めたように、目を瞑った。
「もう、寝よう。」
感情の熱を持て余した私は、ひんやりとした冷たい夜に抱かれて眠りについた。
ー落ちてゆくー
ああ、
星が落ちてゆく…。
流れ星を見たのは一瞬だった。
何故か突然、君の顔が浮かぶ。
…変な私。
一つ願いが叶うなら、君と一緒にいたいなんて。
いつから、そんな願いを胸に抱いていたんだろう。
君には知る由もない。
わたしのこの想い。
ああ、まただ。
君に溺れて、落ちていく。
この無数のカケラと共に、落ちて落ちて、
そして、燃えては煌めいて。
…切ないな。
もう二度と恋なんてしないと思ったのに。
きらり、きらりと、
私は、君に、落ちてゆく。
ー夫婦ー
夫婦、と聞いても良い印象があまりない。
きっとそれは、私が結婚というものを諦めてしまったのと、両親の仲がとても悪いからだろう。
最近、私には好きな人ができた。
時々ゲームをしながら話す、声が素敵な彼だ。
だけど、私は彼の姿形を見たことがなく、声しか知らない。
そして、彼は一回り以上年上で、結婚していてもおかしくない年齢だ。
彼にもし妻がいて、夫婦だったとするなら、私のこの恋心はどこに置いていけば良いのだろう。
胸を痛めながらも、何故か彼のことを想像してしまう。
恋人がいるのかすら、怖くて聞く勇気がない。
もし、私にもっと近づく勇気があって、彼が未婚なら、『夫婦』になれる可能性はあるのだろうか。
そもそも、私を好いてくれるんだろうか…。
こんなにも心が揺れるのは、彼の温かく優しい心に惹かれているからだ。
優しく繊細で、美しい感性が、声を通して伝わってくる。
そんな彼が大好きだ。
『夫婦』というものに夢はないけれど、彼なら…と考えてしまう。そう思えるだけでも、私にとっては一歩先に進めたのではないかと思う。
この恋に、なんとなく望みはないような気がしている。
だけど、一筋の光のような彼を見つめていたい。
今は、今だけは、この気持ちを大切にして温めていたいと、心の奥深くで思った。