ー微熱ー
どうせすぐに冷めてしまうんだろう。
時計の針は深夜2時を指している。
うんざりするほど、彼のことを考えていた。
何時間もの間、ベッドの上で考え込み、項垂れている自分のことが急に馬鹿馬鹿しく思えた。
思わず頭を掻きむしる。
「はぁ、なんで好きになっちゃったかな…。」
と、思わずこぼれ落ちる。
これまでの経験上、こんなに強い恋愛感情を持った時に上手くいった試しがない。
彼を気になる気持ちがどうしても止められない。
LINEを開き、
「明日の夜は暇?」と彼に送ろうと思い、震えそうな手で文章を打ってみる。
「いやいや…。急すぎるか。それに、断られたらどうしよう…。」とぶつぶつ言いながら、大きなため息をついた。
ぽん。と、スマホを布団の上に投げると、急に涙腺が緩む。
ああ、この熱を持て余してしまうのが悔しい。
「好きすぎて苦しいな。」
そんな熱に魘されるような夜を繰り返して、私は何処へ向かうのだろう。
自分の中にいる強烈な感情に振り回されてることに疲れて果ててしまった。
いい加減、歳を重ねれば、落ち着くのかと思ったのに。
微熱なため息を吐き、諦めたように、目を瞑った。
「もう、寝よう。」
感情の熱を持て余した私は、ひんやりとした冷たい夜に抱かれて眠りについた。
ー落ちてゆくー
ああ、
星が落ちてゆく…。
流れ星を見たのは一瞬だった。
何故か突然、君の顔が浮かぶ。
…変な私。
一つ願いが叶うなら、君と一緒にいたいなんて。
いつから、そんな願いを胸に抱いていたんだろう。
君には知る由もない。
わたしのこの想い。
ああ、まただ。
君に溺れて、落ちていく。
この無数のカケラと共に、落ちて落ちて、
そして、燃えては煌めいて。
…切ないな。
もう二度と恋なんてしないと思ったのに。
きらり、きらりと、
私は、君に、落ちてゆく。
ー夫婦ー
夫婦、と聞いても良い印象があまりない。
きっとそれは、私が結婚というものを諦めてしまったのと、両親の仲がとても悪いからだろう。
最近、私には好きな人ができた。
時々ゲームをしながら話す、声が素敵な彼だ。
だけど、私は彼の姿形を見たことがなく、声しか知らない。
そして、彼は一回り以上年上で、結婚していてもおかしくない年齢だ。
彼にもし妻がいて、夫婦だったとするなら、私のこの恋心はどこに置いていけば良いのだろう。
胸を痛めながらも、何故か彼のことを想像してしまう。
恋人がいるのかすら、怖くて聞く勇気がない。
もし、私にもっと近づく勇気があって、彼が未婚なら、『夫婦』になれる可能性はあるのだろうか。
そもそも、私を好いてくれるんだろうか…。
こんなにも心が揺れるのは、彼の温かく優しい心に惹かれているからだ。
優しく繊細で、美しい感性が、声を通して伝わってくる。
そんな彼が大好きだ。
『夫婦』というものに夢はないけれど、彼なら…と考えてしまう。そう思えるだけでも、私にとっては一歩先に進めたのではないかと思う。
この恋に、なんとなく望みはないような気がしている。
だけど、一筋の光のような彼を見つめていたい。
今は、今だけは、この気持ちを大切にして温めていたいと、心の奥深くで思った。
ー宝物ー
『君が好き。』
君を見つめる度に、私の心の奥は煌めく。
それはまるで宝石のように。
君の存在も、君の気持ちも、何もかもが大切。
君の幸せをいつでも願ってる。
それでも、何よりも、私の心の奥にある宝物を一番に大切にしていないと、君を上手く愛せないから。
だから、その宝物を大切に大切に扱う。
いつか君にこの宝物を渡せる日を夢見て、今日も煌めき続けている。
ーキャンドルー
暖かい。
それでいて、消えてしまいそうだ。
ゆらゆらと揺れる様は、あなたを見つめている時の私のようだ。
小さな火を灯して、大切に大切に温めている恋心は、いつでも揺らめいている。
あなたと同じ火を、渡し合うことができたらどれだけ素敵だろうと、その日を待ち侘びている。
ゆらゆら、ゆらゆら。
揺らめいて、ただ一人を見つめる灯。