他愛のない話をしながら、
過ぎた日を想う。
あの頃はこんなことをしていた、
この時はそんなこともあったっけ。
懐かしい話に華を咲かせながら、
誰ひとり、未来の話には触れられなくて。
過去があまりにも眩しくて、
眩し過ぎる光が全てを飲み込んでしまって。
未来なんて、見えやしない。
僕らが未来を見据えられるようになるには、
もう少し時間がかかるみたいだ。
だから、今だけ、
この優しい想い出に浸ることを許してほしい。
たそがれどきに夢をみる。
夜がおとずれる前のひとときに、
やわらかな夕陽をまぶしそうにみる君と、
なんてことない話をする夢を。
はじめに君を見つけたときはおどろいた。
ずいぶん昔にわかれたきりで、
もう二度とあえないと思っていたから。
夢のなかだから、
そんな奇跡がおきたのかもしれないね。
君とたくさんおしゃべりをして、
あのとき話せなかったことのつづきも話して。
ああ、よかった、
これでもう思い残すこともない。
意識がたそがれにとけていく。
さいごにみたのがしあわせな夢で、
ほんとうによかった。
きっと明日も、明後日も、
変わらぬ日常が続くと思っていたけれど、
どうやらそうでもなかったらしい。
君と一緒に過ごすのが当たり前だと思っていた。
けれど、君がいなくなって、
当たり前が当たり前ではなくなって。
ひとり、取り残された気分になった。
失われたものは戻らないけれど、
君と過ごした日々の思い出だけは、
失わずに、忘れずにいたいと思った。
大切な貴方のためならば。
この命が燃え尽きるまで、
立ち向かい続けるのも苦ではないのよ。
夜明け前に家を出る。
日が昇る前、まだ夜の空気が残る街。
微睡む街を眺めながら、ゆっくり歩く。
歩調に合わせるように、ゆっくりと朝日が顔を出す。
街がそろそろ目覚める頃だ。
朝焼けの空を仰ぎ、今日という日に思いを馳せる。
今日も良い日になりますように。
じわじわと明るさを増す朝日に願掛けをすれば、
より一層眩しく輝いたように見えた。