薄暗くて、しかし温かい
そんな中に二人で沈む
ピアノを持ち出して
踊ってよ、と軽く鍵盤を洒落たように引くと
彼女は嬉しそうに
椅子を立って、彼女持ち前の眼鏡を外した
そして私に眼鏡をかける
視力に差異はないので支障はない
普段から見たくない現実を見ないように
フィルターをかけているだけ
眼鏡をかけて曲を弾いて
彼女が楽しそうに歌って踊る今
この瞬間はフィルターをかける必要もなく
ただゆっくりとこのぬるま湯に浸かりたい
ああ、彼女はいつぞやのパリジェンヌのよう
ヒールを履きながらも華麗に踊る
桜が散るようだ そして川に落ちて流れてゆく
ずうっと眺めていたい
俺はあの男が憎いのだ!
さぞ寒かろうと
私にマフラーを渡す男が
要らないと申してもいやいや、寒かろやと
首元に巻かれる
ましてや、腹にカイロも突っ込まれる
明日こそあいつを押しのけてやろうか
同じ年のクセして
大人ぶって、俺を可愛がろうとしやがって
その学生帽そいでやろうか
タッパも俺に近づくだろう
そのいたいけな顔やまつ毛や眉の形も愛しや
と、触るその手を剥いてやろう
ああ、無性に腹が立つ!構わないでくれ!
眠る
覚める
身体は寸分たがわぬ筈だが
どこだか変わってるように感じる自分がいる
窓を開けて朝の冷たい風を顔に浴びる
醒める
何処やらで読んだ本によると
私の体の細胞は一日ごとにまるっきり変わる
つまり別人なのだが、
脳の中での記憶が受け継がれている
故、意識は繋がったように見えるとのこと。
なんだか私が私ではないようだが
受け入れる他あるまい。
もう手に入らないだろう
そう思っていたあの感情が
再び手に入る時
天使がもとってきた時
舞台上に姿を見せた君は
私が見せたのとは異なる
でもそれでいて美しい舞で
その舞台上に舞い戻ってきた
あせまでも美しく
天からの贈り物
美麗なるその顔
類稀なるその技術
でも君はそれを欲しない
そういうやつだな君は
おかえりと言いたい
でも君は聞かないだろう
私の言葉を
星を巡る
頂きに辿り着くまで分からない感情
感動、激動、喪失感?
幾度とない夜明け
あまりに大きい星は身に余る
小さすぎると足りない
頂きの先にある楽園を目指してはしごをかける
自分だけの星