薄暗くて、しかし温かい
そんな中に二人で沈む
ピアノを持ち出して
踊ってよ、と軽く鍵盤を洒落たように引くと
彼女は嬉しそうに
椅子を立って、彼女持ち前の眼鏡を外した
そして私に眼鏡をかける
視力に差異はないので支障はない
普段から見たくない現実を見ないように
フィルターをかけているだけ
眼鏡をかけて曲を弾いて
彼女が楽しそうに歌って踊る今
この瞬間はフィルターをかける必要もなく
ただゆっくりとこのぬるま湯に浸かりたい
ああ、彼女はいつぞやのパリジェンヌのよう
ヒールを履きながらも華麗に踊る
桜が散るようだ そして川に落ちて流れてゆく
ずうっと眺めていたい
5/24/2025, 10:08:54 AM