「遠くの街へ」
僕は二股をしている。
「遠くの街へ行こう。
2人で誰も知らないような街に。」
そう、2人の彼女に告げた。
街に行く準備ができたら同じ待ち合わせ場所に
来てくれ、と伝え。
そう、2人の彼女にだ。
僕には2人の同じくらい大好きな彼女がいる。
1人に愛想が尽きて1人に愛を注いでいる訳では無い。
2人とも僕のことが好きだし僕も2人のことが好きだ。
彼女達は彼氏が同じだし好きなブランドも一緒。
会わせたらきっと気が合うだろう…そう踏んだのだ。
そして僕の予想通り彼女はもう1人の彼女と
仲良さそうに談笑している。
2人が仲良くなったら僕と3人でお似合いのカップルに
なれるとふんでいたのだ。しかし
現実そう甘くはない。
僕は浮気がバレ、2人の彼女に振られた。
そして2人の彼女が恋人同士になってしまった。
「えっ?」
まったく予想もしていなかった展開だった。
だけど大好きな2人の幸せそうな顔を見て、僕は決めた。
「遠くの街へ行こう。
2人が誰も知らないような街に。」
「現実逃避」
彼の結婚式に行った。
私は彼が好きだったのに。
彼は私の方を心配そうにみている。
あなたが呼んだんじゃない……!?
自分は彼のことが本当に好きだったのだと……
無力な自分にとても腹がたった。
たくさん好きなことをして現実逃避。
新しく出来た彼氏は彼とはちがう当たり前を持っていて
彼とはちがう服を着て。何もかも違う。
けど彼とはちがい私を一途に愛してくれた。
今日がそんな今カレとの結婚式。
元彼を呼んだ。今カレには悪いけど、
私と同じくらい今アイツには現実逃避して欲しいのだ。
「君は今」
私は生まれつき体が弱かった。退院しては入院、
退院しては入院を繰り返していたのだ。
何にもやることがないし、ご飯ははっきり言って
母のものの方が美味しかった。
唯一の楽しみと言えばお見舞いの食べ物と、
同じく入院している男の子と話すことであった。
私の体調が悪い時は彼が花を、
彼の体調が悪い時は私が菓子を渡し合うぐらい
には仲が良かった。
彼の太陽のように明るい性格も小麦色の肌も
大好きだった。
困った時は「どうしたの?」と話しかけてくれるし、
笑った時のえくぼが似合う子だった。
意外と楽しい日々だったが私がいよいよ退院という日に
彼の意識は無くなってしまった。
今でもあの日の夢を見る。
そんな君は今、重い夢の中で苦しくないのだろうか。
君は今、何を感じているのだろう?
あなたが苦しむのなら私が代わってあげたいぐらい、
君がいない日々はとても寂しい。
早く君に会える日が来ないものか……
「物憂げな空」
『物憂げな空は青色』か?
ある夏の日、めずらしく寄った図書館で
一目惚れをした。
来る日も来る日も僕は図書館に通った。
僕に話しかけられたときは少し嫌な顔をするのに絵本を読んでるときは顔が綻ぶ。青いヘアゴムをつけた。
そんな女の子。
来る日も来る日も話しかけた。
君の好きなものを少しでも知りたかったから。
君の言ったことを忘れないように。
いつしか図書館に行くと手招きをしてくれるぐらいには
仲良くなった。
だからこそ、僕と君との間の感情はちがうのだと
思ったら泣けてきた。
しかしながら気づいた頃に別れはやってくる。
君に会える最後の日。
「今日でさよならだね…僕との日々もいつも変わらない景色でいつもの本を読んでいる君にとってはいつもと同じ物憂げな空だったんだろうね。」
「そんなことないわよ。いつもよりも青いわ。
いつもと違うのはそれだけだけど。」
きみの目は涙で赤かったっけ。
彼女の好きな色は青。
僕との日々が君の好きな色で染められたのなら
とても光栄だ。
まあさよならなんて僕のついた嘘だけど。
「小さな命」
「あなたの小さな命。
手で触れるととってもあったかいんだよ。」
君の白いワンピースが靡くだけで笑みが溢れる。
君がいるだけで寂しさや辛さがなくなる。
君が笑うだけで世界が回りだすような、
そんな気さえするのだ。
こんなに幸せならもう何もいらないと思った。
しかし、僕には新しい宝物ができた。
それがあなたという小さな命。
まだ顔も見たことがないけれど、あなたを守れる日が
一日でも長くありますように。