善悪
満場一致の善悪なんて決められる物事があるのか
ほんとうの悪は、人伝に見聞きしただけのことを
善だ悪だと決めつけること、それだけだ
それぞれの言い分を公平に聞くべきだ
偏った言い分を聞いて判断してはいけない
一方の言い分だけが伝わり、
無視される言い分があってはならない
何が善とも悪とも言いきれない
人間が一生かけても、生まれ変わって考えても
たくさんの人の考えを聞いても
何も決めきれない
また、人間主体になってもいけない
動物同士の狩りで、どちらが善か悪かなどあるものか
立場が替われば善も悪になり悪も善になるし
善を尽くしても、自分や誰かに、うち勝てないこともある
それでも善を尽くすことで自身や、誰かが救われるのなら
そうすればよい
人間にできる誰にとっても善であることとは何か
道端や海岸のゴミを拾うとか
ゴミを減らそうとか
そんな程度だろう
いくらチャリティー活動をしても
いくら人を殺しても
実行している当人にとっては全て善であるのだから
新型コロナが何だ
少子化が何だ
政治家の不祥事が何だ
芸能人の薬物乱用が何だ
人殺しが何だ
スポーツが何だ
AI技術が何だ
テレビやニュースが早口でまくしたてる善悪とは
なんとも、ちんけなものだ
無色の世界
無色の世界を想像した。
無色の世界といっても景色はほとんど真っ白な映像だった。
なぜか音もなく静かすぎて、無機質な空間で、
飾りのない黒髪の女一人が立っていて、
黒い瞳で、
こちらを、
真っ直ぐ睨むように見ていた。
どこまでも区切りのない空
凛々しい草花
みずみずしい果実
めいめいに、生命活動をするいきものたち
いとしい者の瞳や頬
身体中を駆け巡り、湧き上がる血液
彼女は、そういう、色にあふれた世界を欲して
あんなに苦しそうに息をしているのだろう。
私は無色の世界を覗くのをやめた。
桜散る
この季節に、おまえは天国へ行った
花びらが堕ちた桜並木の下で、私はたくさん泣いた
この世は穢れている
だから、知らないほうがいいと思った
そちらでは、親より先に死んだという罰で
石をいくつか積み上げて親のために塔婆をつくるそうですね
でも、完成間際で鬼に塔を崩されて
おまえはまた一から石を積み上げる
この世に生まれるのと、どちらがつらいのだろうかと
何度も考えました
水子地蔵様は、おまえを救ってくださるというけど
私は水子地蔵様に、おまえを救ってくださいと
熱心にお願いしたことがありません
私は今、不幸せです
自分で決めたことなので後戻りはできません
こんどは失敗しないように、生きるしかありません
そして死んだら、おまえの元へ行ってこの手で救いたい
特別な存在
崇高な存在
高僧のような、仏や神とも違うけど
ほかに言い表せられない
あなたは自己犠牲を厭わず、私を守り育ててくれました
あなたに恩返しがしたい
心配をかけたくない
不幸せなことはたくさんありますが、
あなたと同じ世界に生きていることが、幸せです
恋しい
いつも見ていた
いつの間にか、あなたのようになりたいと思うようになった
いろんなものを手放して、得たのだと思う
その菩薩のような微笑みを
もしも、私もあなたのように行きてゆけたら
来世でも、お会いできますか
生きている間にどれほどの徳を積めば
また、あなたのもとへ生まれることができますか
夢が醒める前に
幸せだった
夢の中では
そんなの、悲しい
でも現実も悲しい
夢の中で暮らしていたい
思い描く夢の中では自由
なんのしがらみもない