#鳥のように
逃げ出したかった。
鳥籠から出た鳥のように、自由に。
この退屈な日常は、
まるで牢獄の中にいるみたいで。
冷たい場所でただ一人
声も発せず顔を埋める。
そんな僕を連れ出してくれたのは、
君だった。
炎天下、雨の中、嵐でさえも立ち向かっていく
君はこう言った。
“君は飛べないんじゃない。
飛べないと思い込んでるだけだ”と
君の言動に、背中を押されたんだ。
暗い夜、僕は牢獄を抜け出した。
できるだけ遠くに
もう囚われないように。
自分の翼を精一杯動かして。
ついに大きな崖の上へとたどり着いた。
見上げた空に、星がひとつ。
朝日が頭を出した時、
朝の空に二人の鳥が飛んでいた。
#さよならを言う前に
さよならを言う前に、
君に愛してると伝えたい。
さよならを言う前に、
大好きなものをたらふく食べたい。
さよならを言う前に、
ずっとやりたかったとこをしたい。
どれもこれも達成できた。
でもひとつだけできなかった。
それは、
さよならを言う前に、
自分を好きになること。
多分それが出来てたら、
さよならなんてしなかった。
#いつまでも捨てられないもの
嬉しかったこと
楽しかったこと
それらはすぐに忘れてしまうのに、
苦しかったこと
辛かったこと
そんなものはいつまで経っても忘れられない
心に刺さって、抜けないの。
明るいことで上書きしようとしても、
悲しい凶器を無理やり抜こうとしても
結局は過去をより思い出してしまうだけ。
即効性のない毒が、じわじわと溶かすだけ。
いつまでも捨てられないもの
捨てたいのに、離れたいのに
それらが“トラウマ”という形で
私の中に残るんだ。
#誇らしさ
机に向かって顔をしかめる。
どんな問題よりも難しい、一番苦手な時間だった。
窓の外では雪が降っていた。
(さっさと帰りたいなぁ…。)
そんなことを言えるわけもなく、
時間が過ぎるのを待っていた。
私が嫌いなのはアンケートだ。
学校の、しょうもないアンケート。
その中でも一番嫌いな質問
『自分の長所はなんですか?』
長所…
そんなもの、自分にあるわけないのに。
なんで書かないといけないの?
誰とも仲良くできるわけでもないし、
勉強やスポーツが得意なわけでもない。
特技なんて考えたこともなかった。
(みんなには長所、あるのかなぁ…)
自分だけ、誰もいない場所に取り残されたように
心の奥がキーンと冷たくなる。
こんなの見せしめだ。
なんの取り柄もないやつを困らせ、強調させるような。
いっそうのこと、
「生きていること」とでも書いてやろうか。
生きるのは案外難しい。
息を吸うのだって苦しくなる。
そんな当たり前のこと。
当たり前のことができるだけで、それを誇っては
いけないのだろうか?
(……はぁ。)
まぁそんなこと、書けるわけもなく。
今日も私は、紙切れと睨めっこをするのであった。
死にたい僕を
夜の海が包み込んだ
沈んで、沈んで
でも、溺れなくて
ただ誰もいない海底に
一人取り残されるだけ
苦しいことも
楽しいことも
何も見えないような暗闇に
顔を埋めて
泣いている
夜の海
動けないから
ここにいるしかない
押し寄せる波が、
明日を運んでくる
#夜の海