#子供の頃は
子供の頃は、
鏡に映る自分が、ただただ不思議で
おもちゃのイヤリングをつけて
もう1人の自分に向けてピースしてた。
大人になった今は、
鏡に映る自分が、ただただ嫌いで
大きな厚紙を貼って
隙間から覗く自分にバットマークをつけた。
昔は綺麗に見えていたものが、
今ではこんなに汚く見える。
私の中の灯火は、
いつの日か灼熱の炎となって
私の心さえも、蝕んでしまった。
今は嘆くことしかできない
あぁ、あの頃はよかったなぁって。
#日常
何もかも、変わらない通学路
つまらない日常
テレビで言っていた
目線を変えるだけで世界が変わると
そんな大袈裟な。
試しに空を見上げてみた
雲の色が変わるわけでもなかった
ただ、
なんだか面白い形をしていた
次に前を見る
相変わらず人気の多い住宅街
高校生の笑い声が響く
あれ?あんな建物あったっけ?
…何が建つのかな?
…楽しみだなぁ
ちょっとだけ、心が温かくなった気がした。
#落下
1人で歩く、いつもの夜道
切れかけの電灯が点滅している
明かりに集まった小さな虫たちが微かに音を立てながら
何をやってもダメだった
楽しいことなんて、嬉しいことなんて
なにもない
生きる意味も分からなくなる
ふと、今朝のニュースが脳裏に蘇る
1人の子供がマンションから飛び降りて亡くなった
きっとその子も、生きるのに疲れちゃったんだろうな…
正直に意見を言っただけで、批判されて
顔が見えないことをいいことに、暴言を吐かれて
人間の存在が、どんどんいらなくなってって
こんな世の中、生きにくいよ
自宅のアパートが目に入った
そして少しだけ脳によぎる、悪い考え
“この高さなら、ちゃんと消えられるかな?”
この世から去る勇気もないくせに、
気づけば毎日こんなことを考えている
錆だらけの階段を登った後、
自宅のドアの前に立って、下を見下ろした
たぶん迷惑とか、何も考えずに
この夜の闇に落ちていけたらいいのにと
#好きな本
今日もまた、辛い1日が始まった。
道を眺めながら重い足で歩く
いつもと変わらない、つまらない通学路
前方にクラスメイトが群れて歩いていたため、
反射的に道を変えてしまった
これも一種の拒絶反応だろうか
そんなことも考えた
何人かが一緒に行動しているのを見かけるたびに
自分がとても惨めに見えてくる
なんで私はいつも1人なんだろうと
本当は寂しい。
誰かと話したい
でも、こうやって自分から道を断ってしまう
学校に着いた
もちろん誰もおはようとは言ってくれなかった
自分から言う勇気もないのだから当然か
木製の椅子に座って小説を読むのが日課だった
もともと、読書はしなかったのだが、こうやって
暇を潰しているうちに好きになった
本は現実とは全く違った世界に連れ込んでくれる。
ミステリーの世界
恋愛の世界
娯楽の世界……
何がいいって、それを第三者目線で見られることだ
面倒ごとにも巻き込まれなくていい
だから私は今日も本を読む。
こんな現実から離れるため
自分だけの世界に入るため
寂しさを忘れるために
#あいまいな空
夏の風は暑かった
飲みかけのラムネ瓶の底が濡れていた
シャワシャワとセミが鳴く
屋根くらいつけてくれてもいいじゃないかと
目を細めながら空を見上げた
積乱雲とも、入道雲とも言えない雲が流れていた
錆だらけの電車は音を立てて去っていった
それはたった何分前の出来事なのに
ひどく遠く感じてしまう
熱の残るベンチに座って残りのラムネを飲み干した
少しぬるくなった液体が喉を通り抜けるのを感じた
ふとあの電車が走っていった方向に目を向ける
先には林が広がっており、小さなトンネルがあった
今頃、どこに着いてるんだろうな
暑さのせいか、そんなことを考えてしまった
あの時ちゃんと言えていたのなら
そばにいたいって伝えられたのなら
未来は変わっていたのだろうか
また空を見た
気づけばさっきの雲が消えていた
あいつも結局、どっちにもなれなかったのかな
そんなことを思いながら、
電車とは反対の方向に足を踏み出した。