#また明日
“また明日”と言った君は
次の日には消えていた
交通事故に遭ったらしい
君は優しい口調で
いつも僕を励ましてくれた
白いセーラー服と
紺色のスカートがよく似合っていた
君がいたから僕は頑張れた
明日にも希望があるかもしれないって思えた
君の「また明日」を聞くと
救われたような気持ちになった
なのに、もう誰も声をかけてくれなくなった
僕はこれから、明日から
どうやって生きていけばいいの…?
#透明
私は、人の『色』が視える
赤、青、黄色、緑、紫……
人はみんな色を持ってる
鮮やかで美しい
誰もが見惚れてしまうような
その色はきっと人の“才能”を表してる
色があるからこそ
みんな輝いてみえるんだ
いいなぁ
私も色が欲しいなぁ
毎朝鏡を見てみるけれど、私の色はいつも透明
何もない
水みたいに、ガラスみたいに
何もないから
#突然の別れ
君が好きだ
あなたが嫌いよ
やり直そう
もう別れましょう
君がいないと
あなたといると
悲しいから
楽しかったけど
君の暖かさに
あなたの冷たさに
気づけなくて
気づいてしまって
ごめんね
ごめんなさい
やっぱり
それでも
君がいいと思うなら
あなたが嫌と思わぬなら
過去も捨てて
未来を掴んで
ずっと僕と
ずっと私と
一緒にいてくれますか?
#恋物語
“恋なんて、興味ないからさ”
先週までそう言ってたあいつが、
いつのまにか彼女をつくりやがった
あいつだけじゃない
今まで『独身仲間』だった奴らもほとんどいなくなった
そして残っているのが俺を含め、二人だけである
寂しくなったテーブル席で向き合い
ビールを流し込んでから、思い切りテーブルを叩く
「あー、彼女欲しい」
俺がそう言うと、向かい側に座っているさっちゃんが
噴き出した
「俺だってできたら苦労しねぇよ」
「だよなー」
ドラマみたいな恋物語はそう簡単にあったりしない
分かっているからこそ悲しいんだ
そんな会話を交わしながら小一時間、
そろそろ居酒屋をでようとした時、電話が鳴った
相手は先週彼女ができたやつだった
「もしもし?」
「…フラれた」
俺はさっちゃんと顔を見合わせて、にやりと笑った
「じゃあいつもの居酒屋に集合だ。
ちょうど俺らもいるからさ」
「あぁ、ありがとよ」
じゃあな、そう言って電話を切ったあと
さっちゃんとガッツポーズをした
人の不幸を喜ぶのは性に合わないが、
正直ちょっと嬉しかった
「よし、仲間が増えたんだ、もう一杯やるぞ!」
#真夜中
風呂に入ってから、ベットに潜り込んだ
そして、深いため息を一つ
…今日も疲れた
バイト先ではミスして怒られるし、
彼氏からもらったキーホルダーもなくしちゃうし…
毛布をかぶっても眠れない
仕方なくケータイをぼーっと眺めていた
明日は土曜日、別に早く起きなくてもいいのだけど
今日はもう何も考えたくなかった
お気に入りのインフルエンサーの投稿、
最近話題のソーシャルゲーム、
明日の天気予報…
何を見ても、満たされなかった
「声、聞きたいな…。」
彼氏とのメールの文面を読み返す
最後のメッセージは昨日になっていた
ふと時計を見る
深夜0時だった
さすがにこんな時間にメールをするわけにはいけない
諦めて目を閉じた瞬間、ケータイが音を立てた
彼氏からの電話だった
私は贅沢ものだなと思いながらケータイを手に取った