#恋物語
“恋なんて、興味ないからさ”
先週までそう言ってたあいつが、
いつのまにか彼女をつくりやがった
あいつだけじゃない
今まで『独身仲間』だった奴らもほとんどいなくなった
そして残っているのが俺を含め、二人だけである
寂しくなったテーブル席で向き合い
ビールを流し込んでから、思い切りテーブルを叩く
「あー、彼女欲しい」
俺がそう言うと、向かい側に座っているさっちゃんが
噴き出した
「俺だってできたら苦労しねぇよ」
「だよなー」
ドラマみたいな恋物語はそう簡単にあったりしない
分かっているからこそ悲しいんだ
そんな会話を交わしながら小一時間、
そろそろ居酒屋をでようとした時、電話が鳴った
相手は先週彼女ができたやつだった
「もしもし?」
「…フラれた」
俺はさっちゃんと顔を見合わせて、にやりと笑った
「じゃあいつもの居酒屋に集合だ。
ちょうど俺らもいるからさ」
「あぁ、ありがとよ」
じゃあな、そう言って電話を切ったあと
さっちゃんとガッツポーズをした
人の不幸を喜ぶのは性に合わないが、
正直ちょっと嬉しかった
「よし、仲間が増えたんだ、もう一杯やるぞ!」
#真夜中
風呂に入ってから、ベットに潜り込んだ
そして、深いため息を一つ
…今日も疲れた
バイト先ではミスして怒られるし、
彼氏からもらったキーホルダーもなくしちゃうし…
毛布をかぶっても眠れない
仕方なくケータイをぼーっと眺めていた
明日は土曜日、別に早く起きなくてもいいのだけど
今日はもう何も考えたくなかった
お気に入りのインフルエンサーの投稿、
最近話題のソーシャルゲーム、
明日の天気予報…
何を見ても、満たされなかった
「声、聞きたいな…。」
彼氏とのメールの文面を読み返す
最後のメッセージは昨日になっていた
ふと時計を見る
深夜0時だった
さすがにこんな時間にメールをするわけにはいけない
諦めて目を閉じた瞬間、ケータイが音を立てた
彼氏からの電話だった
私は贅沢ものだなと思いながらケータイを手に取った
#子供のままで
小さな足で駆け出した
赤いカバンが揺れ
結んだ髪が風になびく
自分よりも小さな花をちょんちょんと突き
「お花さん、きれい!」
と目を輝かせた
子供のうちは、全てが綺麗だった
空も、花も、鳥も、全て
いつか、世界のみんなが仲良くなれるんだと思っていた
そう思っていたほうが、ずっと幸せだったんだ
子供がきれいと突いていた花を
大人は平気で踏み潰す
そんな世界は嫌だっていくら嘆いたところで
歪んだ旋律は直らない
この子が大人になる頃には
少しは過ごしやすい世界になっているのだろうか?
どうか、その時まで
子供のままでいて…
#愛を叫ぶ。
今日も僕は、愛を叫ぶ。
姿の見えぬ君に
今日誕生日だった君に
“大好き”
そのたった5文字が言えなかった
喉の奥で何かがつっかえて
プライドという汚いものが邪魔をする
もっと早く言えていたら
抱えきれぬほどの愛を与えていたならば
きっと君も幸せで、
ずっと僕も満足で、
過去を消しゴムで消して
未来をえんぴつで描きたい
人生という真っ白なキャンパスに
黒を塗っても、白を塗っても
満たされないから
たぶんどんな色でも駄目なんだ
まだ何も届いてない
いくら言っても届かないのは、分かってるけど
これは僕の自己満足
これは僕のエゴだから
せめて毎日言わせてよ
「愛してる!」
#モンシロチョウ
ひらひらと、
ふわふわと、
ただそれだけが怖かった
2つの目が私を睨む
そこに顔があるかのように
表の顔と、裏の顔
それをきっと
上手く使い分けてる
あちらに行ったと思えば
こちらに戻ってくる
そっくりだね
あなたに
私はきっと、
そんなモンシロチョウに騙されたんだ