彼岸花

Open App
4/10/2024, 11:37:27 AM

春爛漫

咲き乱れた桜に、春一番が吹く
彼らは流れに身を任せ優美に舞うのだった
地に落ちて踏まれることも、川に流れてしまうことも
きっとあるのだろうに

うぐいすが鳴き始めた
他の仲間達の姿は見当たらないのに
ただ必死に鳴き続けていた

見慣れない通学路
同じ学校と思われる制服がちらほらと
賑やかな話し声が聞こえる

人見知りで、何もできないこんな自分も
春に染まれるのだろうか?

4/9/2024, 10:19:05 AM

誰よりも、ずっと

「やっぱりなかなか分かってもらえないなぁ…」

公園のベンチに座って美咲が嘆いていた
美咲は同性愛者、すなわち恋愛対象が女性なのである

「仲良い人でも“好き”って言った途端
避けられちゃうんだよね〜…」

彼女は何回失恋しても決して諦めずに
次の恋に進める性格だった
だが、今回の作り笑顔は今までにないほど寂しそうだ

「…歌恋は好きな人、いないの?」

美咲が聞いてきた

「……いるよ」
「…そっか〜」

ずっと恥ずかしくて言えなかったけど、
本当は、美咲が好きだ
友人としても、恋愛対象としても

もしも私が美咲と付き合えたなら…
誰よりも、ずっとあなたを幸せにできるのに

4/8/2024, 12:00:18 PM

これからも、ずっと

『これからも、ずっと一緒にいようね』

この言葉に私は騙された

ずっと一緒にいられるわけじゃないのに
何の根拠もない言葉なのに
言われた時はただ嬉しくて、
そんなリスクも考えなかった

生きがいなんて何もなくて
辛く苦しい日々を彼が変えてくれた

彼は私の心の隙間を見つけては
滑り込んできて、それを埋めてくれた
彼のおかげで初めて人生が楽しいと思えた

私には彼しかいない
そして、彼もまた私しかいないのだろう
心のどこかでそう思っていた
それがいけなかったのだろうか

彼は私の隠れたところで
他の女にも同じことをしていた

甘いマスクで誘惑し、
疲れた心を見つけてはそれに取り憑くのだ

私もきっと見事に騙されたんだ

その日、彼を問い詰めた
あの言葉は嘘だったのかと
どうせ私のことはおまけだったんでしょと
まるで三流ドラマのようなセリフを言っていた

そこで告げられたのが
さよならだった

こんなの詐欺と同じじゃないか

現金を盗まれるよりもよっぽど辛い
心を弄ばれた挙句の果てに粉々に壊された

これからも、ずっと…
孤独なんだろうな、そう思った

4/7/2024, 12:36:43 PM

沈む夕日

18時、橋の下

水面に夕日が映った

石を投げた

波紋と共に消えていく

涙を悟られぬように

顔を洗った

赤ん坊が黄昏泣きをする理由が

少し分かった気がした

孤独は好きなはずなのに

心のどこかで『寂しい』という声がする

行き場のないこの感情も

夕日と共に

暗闇に沈んでしまえばいいのに

4/5/2024, 12:35:24 PM

星空の下で

かつて親友と星空の下で交わした約束があった

“大人になったらまたここで会おう”

結局、その親友は小学校を卒業する際に親の都合で
遠くに引越してしまった

当時私たちはまだスマートフォンを持っていなかった為
お互い、電話越しでしか連絡を取ることができなかった

だから再々話せるわけでもなく、
だんだんと疎遠になっていった

もう会えないだろう

親友の存在が頭から離れようとしていた時
家の押し入れからある物が出てきた

それはタイムカプセルだった

ただ普通のタイムカプセルと違うのは、
それを作ったのが自分ではないということだ

小学生の頃、その親友と未来の自分に向けた
メッセージを書いた紙を菓子の容器に入れ、
タイムカプセルを作った

そして別れる際にそれを交換していたのだ

“未来のお前へ
ちゃんとした仕事についていますか?
綺麗な奥さんはいますか?
辛いことがあったらいつでも言うんだぞ!
星空の下、あの場所で待ってるからな”

それを読み終わり、自分が微笑んでいることに気づいた

星空の下、あの場所で…

…行ってみよう
親友と共に過ごしたあの場所へ

数日後、その場所へ行ってみた
それは小さな公園だった

交互に滑った滑り台
並んで乗ったブランコ
一緒に登ったジャングルジム

全部あの日のまま残っていた
まるでこの場所だけ時間が止まっているかのように

やはり親友はいなかった

空を見上げた
星が出ていた

しばらくして目の端で光るものを捉えた
流れ星だった

“また親友と会えますように”

絶対にまた会える
私と親友は同じ星空の下で繋がっているのだから

Next