I LOVE…
人に愛してもらうためには、
まずは自分を愛さないと駄目だ
鏡に映った自分を見ながらそう思った。
鏡の中の自分は暗い顔をしていた。
くまが濃く、肌にハリがない。
おまけに目に光すらないのだ。
こんな情けない自分を好きになんてなれない。
よほどのナルシストでないと。
こうやってすぐに諦めようとする性格も
大嫌いだ。
はぁ…。
I LOVE…
その先に続くのはYouではなくmeだと
信じ続けたい。
優しさ
彼氏と別れた。
私からさよならを告げたの。え、理由?
まぁ、あいつとはもう駄目だと思ったの。
何買ってもこんなのいらないだの、ダサいだの。
向こうだって十分ダサいくせにさ。
価値観の違いってやつかな。
寂しいけど、今思えばスカッとしてる笑
えー、そうなんだ笑
彼氏さんも我儘だったんだね。
花凛ちゃんには勿体無いって感じかな?笑
きっともっといい男いっぱいいるよ!
ありがとう。美咲にも幸せになってほしいけど
やっぱりこんなふうに話せる相手がいなくなったら
私泣いちゃいそうだよ。
私は男運がないから当分は大丈夫だよ!
それに、もしも彼氏ができても
花凛ちゃんとはこれからもお話するし。
美咲…あんた本当にいい友達だよっっ!!
家に帰った。
美咲のおかげで元気をもらえた。
いつもいつも私は自分を受け入れてくれる
優しい男を探して彷徨っている。
だけど、一番大切なのは、
いつでも話せる友人の優しさなのだと実感した。
タイムマシーン
「タイムマシーンがあったら、君は
過去と未来のどちらに行きたい?」
「私は…」
過去に行って、もしも歴史をいじることができるのなら
失敗も全部なくせる。やりたかったこともできる。
しかし、その失敗や経験がなかったのなら
今の自分はいないのかもしれない。
未来に行って、自分の将来を見ることができるのなら
それをよりよくするために今自分がやるべきことが
見つけられるかもしれない。
だが、未来は見ることのできないものであるからこそ
今希望を持って生きれているのではないか。
「私は、タイムマシーンなんかいらない。」
それが私の答えだ。この当たり前のように過ぎていく
日常を1日1日精一杯生きる。それでいいのだ。
「あなたなら、どうしたいですか?」
海の底
この世界は私には眩しすぎる。
だからいっそのこと、光の届かない深海に行きたい。
真っ暗な海の底なら、汚いものも嫌なものも
見なくていい。
子供の頃は、鮮やかなものを見るとはしゃいでいたが、いま思えばあれらはもともと汚い物質で、
それを大人たちが塗り替えていただけだ。
こんな誤魔化しだらけで泥のような世界で
私は生きていたくない。
だから、誰にも釣られないように
深い深い海の底に沈みたい。
閉ざされた日記
私には9歳の娘がいた。
彼女は活発でいつもどこかに出かけたがっていた。
太陽のように明るかった。
ある日彼女は、
「思い出を忘れないように何かに書いておきたいな。」
そう言った。
そんなことを言われたのは初めてだったため、
少し驚いたが同時に成長したのだろうと思っていた。
そこで私は一冊の日記帳をプレゼントしたのだ。
表紙には彼女の大好きだったウサギのシールを貼り、
かわいい鉛筆も一緒に置いておいた。
学校から帰り、部屋に入った途端彼女は
わぁ!と嬉しそうに目を輝かせた。
「ありがとうお母さん!大切にするね。」
それからというもの、彼女は毎日一生懸命に
日記を書いていた。
だが、内容は決して見せようとはしなかった。
学校に行っている間には鍵をつけていた。
まぁ、そういう年頃なんだろうなと思っていた。
いつもの暖かい日々がずっと続くと思っていた。
しかし、運命の神というのは実に残酷だった。
彼女が突然倒れたのだ。
救急搬送された病院で彼女の死亡が確認された。
…目の前が真っ暗になり、涙でなにも見えなかった。
ただ嗚咽を漏らすことしかできなかった。
数日後、彼女の生きていた証を形見として持っておこうと部屋を掃除していると
日記を見つけた。
鍵は
かかっていなかった。
そしてその間には紙が挟まれている。
【もう見ていいよ。今までありがとう。】
…そう書いてあった。
私は驚きで何も言えずにしばらく立ち尽くしていた。
そして、静かに1ページを開いた。
5月1日
今日はみんなでお花畑にいった。
その中でも私が好きなのはストックという花。
6月までにたくさん思い出を作らなくちゃ!
5月2日
お母さんと一緒にお買い物をしたの。
お団子を買ってくれてとっても嬉しかった!
やりたいことは全部やって、
食べたいものは全部食べたい!
お星様になったときに後悔しないようにね。
段々と目頭が熱くなる。
その後もお祭りにいったこと、一緒におしゃべりしたことなどが書かれたページをゆっくりと時間をかけて読んだ。
そして最後のページには
【お母さんがこれを読んでるってことはもう私はいないんだよね。今まで本当にありがとう。そしてごめんね。
実は隠してたことがあるんだ。…他の人には内緒だよ!
私、ミライが見えるんだ。…こんなの信じてもらえないと思うけどホントだよ。だから、楽しいことも全部見えちゃうんだ。悲しいこともね。私、6月になると死んじゃうんだって。なんとかなんとかっていう病気らしい。
でもね、ミライは見えても、それを変えることはできないの。なんでだろうね?…だから私はせめて思い出を
いっぱいいっぱい残しておこうと思ったんだ。
だから今までわがまま言ってごめんなさい。
お母さんのおかげで、楽しかったよ。】
あの子が死んでしまったのも、
こんな能力を持っている理由もわからない。
でも、あんなに小さな子が“死”という運命を背負ってきた辛さはよくわかる。
そして彼女は誰よりも大人なのだ。
私は一冊の日記を抱きしめた。
これは我が子の分身なのだから。