君からのLINE
「いつもお疲れ様」
「一緒に飯でも行く?」
5分後
「はい! 是非行きましょ👍」
つい職場でニヤけてしまった‥
君からLINEの返信がくるだけで
僕はどんなに辛いことがあっても乗り越えられるんだ。
去年の春
君と出会った。
…君は初めて会ったときから元気いっぱいで
とても明るかったよね。
「これからもよろしくおねがいします!」
この威勢のいい声を聞いたとき、僕は
とても嬉しくなったんだ。
「あぁ、よろしくね。」
それからも君は一生懸命で…
時々失敗したときもあったけど、
全力で謝ってくれたから
怒る気にもなれなかったよ。
…こんなことを思い出していると、
ちょうど【彼】が出張から戻って来た。
「只今帰りました!社長!」
スーツのシワ一つ見せずに彼はそう言った。
…唯一、髪はオールバックになっているが、
それだけ全力だったのだろう。
「おかえり、新入り君」
彼は私の信頼する部下の一人だ。
いつでも彼は私に積極的に話しかけてくれるのだ。
「社長、ご飯どこに行きます…!?」
目を輝かせて彼はこう言った。
「…そうだな、じゃあ今日は君のチョイスで」
いつか彼と
…いや、
社員全員と、タメ口で話せるときが来ればいいのにな
そう思いながら仕事をこなす日々だった。
命が燃え尽きるまで
はぁ〜…
大量の薬剤とビール缶が散らばったベッドで
酒臭い息を吐いた。
「…今日も死ねなかった。」
毎朝起きたたびに同じ言葉を吐いている。
こんな世界で生きていくのはもう疲れた。
親からもらった髪を金髪にしなけりゃよかったのかな
もっと真剣に勉強して真面目に生きとけば…
今ごろ幸せだったのかな?
俺なんか産まれてこなかったらよかったのに
…なんでこんな無能な奴を産んだんだよ…母さん
毎日毎日、生きようともせずに
酒に溺れて薬に頼ってる自分が世の中に
貢献なんてできるわけないじゃん…!
…俺だって金に困らずにやりたいことやって
生きててよかったって言いながら死んでいきたいよ…
不完全燃焼で死にたくないって思ってた時の自分に
戻りたい。
そう思いながら俺は今日も致死量の薬をボリボリと
噛みながら、酒を流し込むのだった…
本気の恋
『本気の恋』がしてみたい。
…そう思っていたのはいつだっけ?
陽炎のようにぼんやりとした恋ではなく、
両想いでお互いに一途な恋がしてみたかった。
…でも、こんな私には無理だ。
人前でろくに話せなくて
何でもすぐに諦めて
いつも話しかけられるのを待っている私なんて。
…できないって分かってるのに恋愛ドラマや漫画を
見続けてきて、そこに自分を当てはめて……
…馬鹿馬鹿しい
自分が傷つくだけなのに。
…でも、こんな私にも話しかけてくれる人がいた。
「今日も素敵だね!」
「辛いこともあるけど、一緒に頑張ろう。」
こんな言葉をかけられながら、毎日
ニヤついている。
熱があるんじゃないかってくらいに
顔が熱かった。
…あぁ、これが『恋』なんだ。
私の追い求めていた。
彼の言葉は勇気と、生きる活力をくれた。
今日も画面越しに彼を見る。
彼の職業は動画配信者。
私以外にもファンは沢山いる。
この言葉を私だけにかけてくれないのは寂しいけど
…いつかは…
私のことを「ろくに恋愛のできない悲しい女」
と言う人もいるかもしれない。
でも、そんなの気にしない。
私は彼が大好き。
私は今、本気の恋をしているのだから…!
カレンダー
朝が来た。
今日も決まってカレンダーを見る。
あと4日か…。
毎年決まったところに赤いペンで印をつけている。
…だって、大切なあなたとの結婚記念日だもの。
もう結婚してから何十年もたっている。
結婚記念日の日は2人で意味もなく
一緒にデパートに行ったわよね…。
…とてもとても楽しかった。
でも、いつの間にか、結婚記念日は楽しさだけでなく
「寂しさ」も感じさせる日になってしまった。
そのたびに私はあなたを忘れようとしたけれど、
…やっぱり、私はあなたのことが
忘れられなかった。
今日も1人、近所のデパートに行き、
二人分のショートケーキを買ってきた。
家に帰り、買ってきたケーキを仏壇に供えた。
「私と結婚してくれて本当にありがとう。」
そして飾られた写真に向かって笑みを浮かべてみせた
来年のカレンダーもそろそろ買わなくちゃ。
喪失感
……はぁ。
気づけば今日一日中ため息をついている。
…なんでだろう?
別に特別辛いこともなかったし
ただ平凡な生活をおくってるだけなのに。
今日は何をしようとしてたんだっけ…?
それすらも ろくに分からなくなってしまった。
…そうだ。
こんなときはプリンでも食べよう。
そう思って冷蔵庫を開けた。
…美味しい
とは思わなかった。
普段はつい食べ過ぎるくらいなのに。
…はぁ。
今日は何やっても駄目みたい。
「今疲れているそこのあなた!!必見ですっ!!!」
なんだなんだこのどでかい声は
音量を下げた。
テレビショッピングみたいだ。
おなじみのキャストやさくら達が写っていた。
「今日おすすめするのは…
この疲労回復サプリメントでs…
ブチッ
あいつが言い終わる前にテレビを切ってやった。
…そうだ。思い出した。
私は今日、有給が残ってるから少し休めと言われて
仕事を休んだんだ。
「先輩も、たまには好きなことしてくださいね!」
「…先輩は頑張りすぎなんですから。」
「…うん。ありがとうみんな。」
私は、後輩たちの思いに応えたくて
一生懸命、充実した休みをおくろうとしてたんだ。
…でも結局何もできなかった。
分からなかった。
何をすればいいのかも。
…案外仕事より難しいのかもしれないな。
だったらいっそこの喪失感に飲み込まれて
流れに身を任せればちょっとは楽になるのかな?