紗夢(シャム)

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1/9/2023, 3:23:46 PM

【三日月】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

1/1 PM 5:30

「わ~、寒いね~」

 踊るような足取りで先頭を歩きながら
 古結(こゆい)が呟いた。
 日射しが暖かかった昼間と違って、
 辺りはすっかり暗くなって冷たい風が
 吹いている。

「晩ごはんの時間にはまだ早いけど、
 ちょっとお腹すいちゃった」
「……ラーメンでも食べて帰る?」
「真夜(よる)くん、ナイスアイディア!
 宵ちゃんと天明(てんめい)くんも
 それでいい?」
「……いいけど」
「異議なし」
「ちなみにわたしは醤油派で~、
 宵ちゃんと真夜くんは塩派なんだけど、
 天明くんは?」
「あー、俺は味噌だなぁ」
「バラバラだねぇ。――あっ、じゃあじゃあ、
 カップヌードルだったら好きな味は?
 せーの!」
「「「「カレー」」」」
 
 まさかの満場一致!! と言いながら
 爆笑している古結と、
 その姿を見て柔らかに微笑んでいる真夜と、
 笑いをこらえようとしているのか口許を
 手で押さえて小さく震えている宵。
 俺も思わず笑ってしまった。

 古結 暁、星河(ほしかわ) 真夜、星河 宵。

 幼なじみだという3人と、俺は知り合って
 日が浅い。
 ただ、一緒にいて、不思議な居心地の良さを
 感じている。

「……暁、笑ってばかりいないで、
 ちゃんと前見て歩きなさい。
 人にぶつかるわよ」
「はーい」

 古結に注意する宵の耳元で揺れる、
 三日月に猫が座っているデザインの
 イヤリングが、街路灯の光を受けて
 キラリと輝いた。

1/9/2023, 12:20:35 AM

【色とりどり】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

1/1 PM 2:32
「ドリンクバーも、こう見ると
 バリエーションが豊富だよな。
 コーヒーと紅茶だけで何種類あるんだ?
 ひとまず、古結(こゆい)がアップルティーで…」
「宵はカフェオレ」
「カフェオレ…カフェオレ…。
 ――カフェラテとカプチーノとカフェモカは
 あるのにカフェオレがないな」
「ああ、その中ならカフェラテ」
「俺には違いがさっぱりわかんねーわ……」
「天明(てんめい)はホット? アイス?」
「俺はアイスウーロンにしとく。
 真夜(よる)は?」
「水」
「こんだけ色とりどりあるのに水か……」

1/7/2023, 4:46:06 PM

【雪】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

1/1 PM 2:30
「飲み物尽きそうだな。ドリンクバー行ってくる」
「……天明(てんめい)、オレも行く。
 暁、何がいい?」
「アップルティーでお願いします!」
「了解」
「……? 宵のは聞かなくていいのか?」
「聞かなくても分かるから」
「おー、さすが双子」

「じゃあ、真夜(よる)くんと天明くんが
 戻ってくるまでちょっと休憩~。
 楽しいねぇ、冬ソング縛り」
「まだ続ける気?」
「だって名曲揃いで歌うのも聞くのも
 テンション上がるんだもん。
 やっぱり冬って寒いから、温もりを求めて
 素敵な恋の歌が出来やすかったりするのかな」
「どうかしらね」
「それにしても!
 天明くん、歌うま過ぎない?
 『粉雪』も『Lovers Again』も原キーで
 余裕で歌いこなしてたよ!
 音域どうなってるの!」
「……なんで怒ってるのよ」
「だってイケメンで背が高くて運動神経良くて
 性格良くて歌までうまいなんて……正直、
 とんでもない欠点のひとつやふたつあって
 欲しくなっちゃう」
「理不尽な……」
「大変……宵ちゃんがもうメロメロに骨抜きに
 されて天明くんの味方しかしてくれない……」
「…っ、メロメロにも、骨抜きにもされて
 ないし、味方をしたつもりもないわ」
「冗談だよ~。天明くんの歌には感動したけど、
 わたしにとっての最高得点は宵ちゃんの
 『雪の華』と真夜くんの『ヒロイン』だしね」
「……暁の『White Love』も良かったわよ」
「やったぁ。……でも確かにそろそろ冬ソング
 ストックが切れそうかも。
 もうボカロを入れるしか……」
「アタシと真夜はアンタに聞かされてきたから
 ある程度わかるけど、槇(まき)くんは
 全然知らないかもしれないわね」
「いっそ天明くんをボカロ沼にはめたいんだよ。
 歌って欲しい曲が多過ぎて」
「……メロメロなの、暁の方じゃない……」

1/7/2023, 12:19:53 AM

【君と一緒に】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

1/1 PM 1:00

 (……何なの)
 いつの間にか真夜(よる)と暁は
 少し前方を歩いていて。
 今、アタシの隣には槇(まき)くんがいる。

「あー…マジで旨かった。
 あんだけ旨いと、他のも食ってみたくなるな」

 全メニュー制覇はキツそうだけどな、と
 明るく笑いながら言う。

「初詣の後は必ず行くんだろ。
 それ以外で行くことってあるのか?」
「……気が向けば」
「じゃあ行く時はまた誘ってくれ。
 さすがにひとりスイーツは勇気がいるし」
「え?」
「ん?」
「……槇くんは……、その、アタシたちに
 付き合わされるの……迷惑じゃないの?」
「ははっ、何だそれ。宵たちと一緒にいるの、
 俺は楽しいだけだよ」
「……そう」

 アタシは……キミと一緒にいるのが苦手。

 身体が緊張して変に力が入ってしまう。
 呼吸がおかしくなってクラクラする。
 鼓動がどんどん早くなる。

 ――いつもの自分でいられなくなる感覚。
 それがとても苦手、なのに。

 甘いものが嫌いじゃないということを
 新たに知ってしまった。
 アタシたちといる時間が嫌ではないことも。

1/5/2023, 5:36:20 PM

【冬晴れ】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

1/1 PM 1:00

 (……いい天気だ)
 冬の晴れた空は嫌いじゃない。
 冷えた空気。
 澄んだ青。

「キレイだね~」

 いつの間にか隣に並んで、
 空を見上げながら暁が言う。

「なんでかな、夏より冬の方が絶対
 空の色キレイだよね、真夜(よる)くん」

 冬の空の方が綺麗に見える理由。
 説明出来ない訳ではなかったけれど、
 本気で知りたいと思ってないだろうから、
 「そうだな」と同意だけしておいた。

 少し後方には、天明(てんめい)と二人きりに
 されて、うろたえている宵がいる。

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