「ハッピーエンド」
どんなに過酷な状況でも立ち上がり、邪悪な存在を退けて最後には王子様と結婚し幸せに暮らす。そんなハッピーエンドの物語の主人公である強いお姫様に幼い頃から憧れを持っていた。厳しい状況でも自らの力で道を拓き、ハッピーエンドの結末にしていくその姿が輝いて見え、いつか私も強くて誰にでも優しくできる美しい人になるのだと意気込んでいた。
でも、私は物語のお姫様にはなれなかった。
物語の中のように暴力や魔法で支配しようとする悪い人も、剣を持って自分の命をかけて戦う必要もないこの世界。だけど権力を振りかざして攻撃する人はいるし優しさにつけ込む人もたくさんいる。私はこの世界の現実に飲み込まれ、負け、心が荒んでしまった。
ハッピーエンドがこんなに難しいなんて思わなかった。
「見つめられると」
見つめられると、緊張してうまく言葉が出てこなくなる。恋ではない。誰と話していてもそうなってしまう。
相手の瞳に、自分の顔や姿が映っていることがはっきりと分かって怖くなるのだ。相手にとって私はどんなふうに映っているのか考えてしまう。
だからちょっとよそ見をしながら話してくれる方が私にとっては心地いい。
「My Heart」
足元には キラキラ光る欠片が散らばっている。これらは全て砕けた私の心だ。私はただ呆然とそれを見つめていた。でも心が砕けても、現実は止まってくれない。だから欠片を拾い集めて無理矢理に引っ付けた。力任せに直された心は欠片だった時の面影を全く感じないくらいに黒く澱み、ヒビが目立った。それでも、そんな心を抱えてまた歩き出す。輝いていたあの心は、もう戻らない。
「ないものねだり」
君の声が聞きたい。君の瞳を見つめたい。君に触れたい。君という存在を、私の体の全てで感じたい。
なんて、もう叶うことのない欲求。あの日からずっと、私はないものねだりをし続けている。ねだっても願っても、もう二度と満たされることはない欲求に、心は飢えたままで。
私がこの世で生き続ける限り、飢えて枯れた私の心が息を吹き返すことはきっとあり得ないだろう。
「好きじゃないのに」
真っ黒なコーヒーが入った白いカップに口をつける。さっきから何度も同じ動作を繰り返しているのに、コーヒーは全く減らない。その洋服、とても似合ってるね、と向かいの席から笑いかけるあなたはとっくに2杯目を注文していた。
闇のような色のコーヒーも、君が褒めたピンク色のワンピースも、私は好きじゃない。好きじゃないのに飲んでいるのは、着ているのは、あなたの好みのものだから。あなたが喜ぶから。
けれど、もう、疲れてしまった。あなたの理想に合わせるたびに、自分が上書きされて消えていってしまうような不安を感じる。
好きじゃないのに、偽るのはもうごめんだ。