「10年後の私から届いた手紙」
ポストを開けると、見知らぬ茶色い封筒が入っていた。差出人の名前は私。誰かに手紙を送っていたかな、と考えるが思い当たらなかった。最近は手紙を出すということもほとんどない。
恐る恐る封を開けると、それは10年後の私が書いた手紙だった。
10年後にもまだ手紙の文化がちゃんと残ってるんだな、と思いながら、不安とワクワクでうるさく鳴る心臓に手を当て、そっと開いた。
「バレンタイン」
君に渡すはずだったチョコレートは、バレンタインを過ぎてもまだ私の手元にあった。行く場所を失ってしまったチョコレートは、所在なさげにポツンとテーブルに置かれている。
君はいくつのチョコを、何人の女の子から貰ったのだろうか。
「待ってて」
待っててほしい、なんて私のわがままかもしれないけれど。でも、寂しがり屋で人見知りな君のことだから、あっちでも寂しくしてるんじゃないかなって思うんだ。私がいないと、いつも寂しげな顔をしていたから。
眩い太陽に手を伸ばした。少し高いところに行くだけで、こんなにも太陽が、空が近くに感じる。
君と離れて数週間。お土産話のネタはないけれど、あなたと共に過ごせるのならそんなものはなくてもいい。
たとえ行き先が地獄でも、君が隣にいるだけで私には天国に思える。
だからもう少しだけ待っててほしい。
「伝えたい」
勇気を振り絞って、何度も君に想いを伝えようとしてきた。けれどいつも第三者や着信音に邪魔された。私の恋心を運命は嫌い、消そうとしているみたいだ。
けれど、私は諦めない。気を抜けば溢れてしまいそうな想いが、君をみるたびに込み上げてくるから。
何があっても、私は君にこの想いを伝えたい。
「この場所で」
運命の悪戯で、気づけばこんな所にいた。
望んではいなかった場所。けれど、運命を責めたところで何も変わらない。だから誰かを責めるのはやめた。代わりに、ひたすら走り懸命に生きることにした。
今いるこの場所で、夢を咲かせるために。
運命なんかに、負けないように。