「閉ざされた日記」
あなたへの溢れる想いを綴った日記。伝えたくて、でも怖くて伝えられなかった想いや、恋をすることの辛さや苦しさが凝縮して詰め込まれている。
そんな日記をパラパラとめくり、懐かしい気持ちで眺め、引き出しにしまう。
結局は実らなかった恋だけど、今は不思議と晴々としている。
いつかまた、恋をした時に、あの日記を開こう。それまでしばらくは閉ざしておこう。
「木枯らし」
冷たい風が吹きつけ、わずかに残った葉っぱたちが散らされ飛ばされていく。その様子を横目に見ながらただ歩いていく。前から強く吹く風が私の髪を乱し、行く手を阻む。それでも、足を止めない。理由は自分でもよくわからない。ただ、外を歩いていればどこかにあなたがいるんじゃないかと思うと、足を止められなくなっただけなのだ。
そうして歩いていると、一層強い風が私を襲い、思わず腕で顔を覆う。強風の中で、あなたの気配を一瞬感じて目を開けた。ぼんやりとした景色の中で、あなたの後ろ姿が見えて思わず手を伸ばそうとする。けれど風に耐えられずに目を瞑り、もう一度開けた時には変わらない街の風景があるだけだった。
ようやく分かった。もうあなたはどこにもいないのだと。
木枯らしの中で見たのはあなたのイタズラか、それとも幻だったのだろうか。
「美しい」
窓から差し込む太陽の光で、部屋に舞う埃がキラキラと輝きながら揺蕩っている。その光景は何だか幻のようで美しさに目を奪われた。普段なら気づきもしないような埃たちが、今は太陽の力を借りながら輝いている。
埃だって輝くことができるのなら。私も誰かの力を借してもらいながら輝ける日が来るだろうか。美しく輝いて、私のような誰かを元気づけられるようになれたらいいな。
「この世界は」
この世界は、不条理で残酷だ。私なんかは、この世界で生きていくのに全然向いていない。それでも、自ら消えようとするのはもうやめた。この世界が持っている美しい面を知ったから。それを教えてくれたのが君だった。君はいろいろな景色を見せてくれた。春の桜吹雪、夏に輝く海、秋の紅葉の絨毯、冬の夜空の星の煌めき。そして、人間の温かさ。この世界がただ不条理で残酷なだけではないことを私に身をもって教えてくれた。
だから私は、この世界で、もう少し頑張って生きてみようと思うのだ。
「どうして」
どうして、彼だったのだろう。他にもたくさんの生き物がいるこの地球で、どうして彼が犠牲にならなければならなかったのだろう。
彼はたくさんの人を照らし、笑顔にできる人間だった。世界の損得で考えれば、私が散るべきだったのに。
ねぇ、神様教えてよ。どうして私じゃなく彼だったのか。