「良いお年を」
白く無機質な部屋の中、ベッドから体を起こした君は窓の外を見ていた。やってきた僕に気がつくと柔らかく微笑んで、もう今年も終わるんだね、と呟いた。
「2人で初詣に行きたかったなぁ。再来年に持ち越しだね。」
少し寂しそうな表情で、賑わう街を見ながら君はそうこぼした。
「そうだな。次は一緒に行けるといいな。」
うまく言葉を見つけられず、月並みの言葉しか返すことができない。君の願いがほぼ実現不可能であることは君も僕も分かっていた。
重い沈黙だけが静かに部屋に広がっていく。
「じゃあ、そろそろ行くね。」
いたたまれなくなってしまい、僕はそう切り出して部屋のドアを開けた。
「うん。良いお年を!」
振り返ると、君が満面の笑みで手を振っている。僕も軽く手を振りながらそっとドアを閉めた。
この時はまだ、これが最後のやり取りになるとは全く思っていなかった。
まだ書き始めて3ヶ月ですが、私の文章を読み、ハートをつけてくださりありがとうございました。
来年も出来る限り毎日書き続けたいと思いますので、よろしくお願いします。
それでは皆様が良いお年をお迎えできますように。
「星に包まれて」
冷たい風の中、空を見上げる。夜空には満天の星の海が広がっていた。
それぞれが自分の光を放つなか、視界の左端に他のどの星よりも強く輝く一等星がその存在をアピールしていた。そんな一等星の輝きが、あなたの眩しい笑顔を思い出させる。あなたはいつも強い輝きを放っていて、どこにいても気になってしまうような、惹かれる存在だった。あの一等星のように。
けれど、あなたから見た私はきっと数多いる星の一つでしかなく、一等星ではないのだろう。
それでも、私は諦めたくはない。
いつか絶対にあなたにとって一番輝く存在になってみせる、と輝く星たちに包まれながら誓いを新たにした。
「静かな終わり」
暗い夜の帳が下りた草原にそっと横たわる。少し冷たい風に包まれながら、星たちに見守られてゆっくり意識を闇へと沈めていく。そんな風に、終わらせたい。
あなたには気づかれないように、1人でひっそりと。あなたの幸せを願いながら静かに終わりを迎えたい。
「心の旅路」
「本当の君が分からない」
そう言ってあなたは私から離れて行った。本当の私ってなんなのだろうか。その日から、本当の私を探す心の旅が始まった。けれど今も、本当の私がなんなのかは、分からない。
あなたに別れを告げられて涙を流したのは本当の私の気持ちなのか、それとも演じていただけなのか。
いつか旅の中で本当の私を見つけられるのかな。
「凍てつく鏡」
冷たい空気に包まれる湖は、曇天を映し出す鏡となっていた。
夏に君と2人で訪れた時には、太陽の光でキラキラと輝いていた。しかし今は、まるで違う湖のように暗い色をしていた。
そっと水面を覗き込むと、こちらを見る僕の姿がぼんやりと映し出される。靄のようにぼやける僕の顔は、今、一体どんな表情を浮かべているのだろうか。