9/18/2024, 11:14:12 AM
美麗な夜景に伸びる影。矢印のようなそれをなぞった先にあるのは全身を黒いスーツに身を包んだ__認識も追いつかない人でないもの、黒く長い髪が顔を覆い隠しては表情も窺えない。何をするのか何がしたいのか、ふとエレベーターのある部屋の外に目をむけて、微動だにしなかった体を揺らして身支度に移る。しゅるしゅると髪が色素を落として銀に染まり、それをざっくりと切り落として適当に整える。その時見えた顔立ちは先の背格好から変わり少女のもので、いつの間にやら首から下もそういう形に変身している。部屋には誰もいないが、訪れないわけではない。静かにソファに腰掛けて、その貌はにっこりと笑った。
9/4/2024, 4:40:35 PM
私の光、私の雑踏。酷いことに私たちは互いを知り合い惹かれていったのだ、こんなことってない。
依存に似た光、まやかしの色彩を持ったきらめきの翅を幻視させる白髪のおまえに話されて嬉しく思った私の心も今はなく、輝きを損なった関係が喉元に絡まるばかり、命を馬鹿にしやがって、そう睨みつけた先、相変わらずきらめく瞳に足がすくむようだった。
9/3/2024, 1:53:22 PM
きみの命の話をしてよ。まるで死人の真似事かと機能障害を疑う発言に白に色の抜けた髪を揺らして大人はほほえみをゆるく返した。言い訳だ。
「何でもいいと言ったけど、ううん、ナシで。きみの愛の話をしてよ。」
「ああ、それなら変わりない、何しろ私は愛の男だからね。些細なことであってもつぶさに、じっくり語り尽くすとしよう。」
きっと今の君に映えるだろうし。潔くきっぱりと、生きるもの死して動くものを隔絶しきってから語り出された大人の話術は巧みで、青年も取り込まれるように聞き入った。これは愛の話の幕間、彼を生かす波の多くの一つ。