やりたいことは沢山あるけれど、それらの内、一体どれだけのことを成すことができただろう。いつだって僕は中途半端なままで。
己の小さな掌を眺める。この手は何を掴んできたのだろう。それとも、何も? 目の前のものですら、掴み続ける自信がない。
今日もきっと僕は何も成せない。あれをしたい、これをしたい、そんなふうに考えながら、今日も「したい」を募らせる。
君のことを。大事にしたいんだ。本当なんだ。……けれど、やっぱり僕は。
大事にするよの一言ですら、口に乗せる勇気を持てないのだ。
テーマ「大事にしたい」
幸せの絶頂のなかで死にたいと
願い夢見る少女の戯言
空想の世界でならば苦しみを
忘れられるとまなこを閉じるの
微笑みを浮かべる君を
大切に箱にしまって魔法をかけよう
テーマ「時間よ止まれ」
人間のエゴイズムさの塊を
「浪漫だ」などと、のたまう僕等
テーマ「夜景」
お気に入りの場所がある。
家を出て、およそ50メートル。民家と民家の間を縫うように小道を進んだ先に、さらに細い道がある。大人なら通ることを忌避するかもしれない、そんな場所。幼いこどもにとっては、秘密基地への入口だ。
木々の間を抜けた先、狭かった視界は一転して開けた空間が広がっている。たくさんの黄色い花々が出迎えてくれるのだ。
そこは菜の花の群生地だった。よく見ると、タンポポやオオイヌノフグリなんかも紛れ混んでいる。背の低い控えめな彼らはノッポの菜の花に押されて、あまり目立たない。
幼少期、ここは私の秘密基地だった。忙しそうな大人たちは寄り付かない、私のための、私だけのお花畑。私だけの場所だと思っていたけれど、ある日、そこには先客がいた。
私と同じくらいの背丈の、男の子。花に埋もれるように佇んでいた彼は、景色も相まって妖精か何かのように見えた。彼と仲良くなったのはすぐだった。出逢うたび、他愛の無い話をした。大切で、あたたかな、春の記憶。梅雨を迎えて、夏になり。意気揚々と向かったそこに、彼の姿はなく。
それからついぞ、彼と出逢うことはなかった。 遠くに行ってしまったのか、……何か、あったのか。それすらももう、分からない。
大人になった今でも、フラリとあのお花畑に赴くことがある。私も忙しそうな大人たちの仲間入りを果たしてしまったので、休日の晴れの日だけ、という条件付きではあるけれど。
とくに、春の間はできるだけ此処に来るようにしていた。目に優しい柔らかな黄色は、私の荒んだ心を癒してくれるから。それから、縋っているから。あのあたたかな日々に。
そうして今日も、大人の身では狭い小道を進み、いつもの、あの場所へ。私だけの、秘密基地。視界が開けるとそこには、一面の黄色が――いいや、黄色だけじゃない。
花に埋もれるように、誰かが佇んでいる。いつの日かの春の風が私の頬を撫ぜていく。あちらを向いて佇んでいた彼が、此方を振り向く。
嗚呼―――。
あの日の春が、戻ってきた。
テーマ「花畑」
空が泣き虫だから、涙を受け止める地球はこんなにも青い星になったのかな。なんて。
馬鹿げた空想を思い浮かべて、今日も空を想う。わたしの想いもお空に浮かべて、笑顔のお供に加えてくれたらいいな。
きっと、明日は笑ってくれるはず。
テーマ「空が泣く」