人が変わるのは簡単じゃない。私はそれを底の見えない崖へ1歩踏み出すことと喩える。
怖い。見下ろすと吸い込まれそうな真っ暗。
「お前は行かないくていいよ。」
そんな声が頭の中で響く。飛び出そうとしていたのに、体が引き戻される。
行かなくては。しかし怖い。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖……
一瞬、背にあなたの手が触れて、私の体は宙に投げ出された。
時間がゆっくり進む。優しく微笑むあなた。暖かい光に包まれてようやく、私はどこまでも青い空を見上げていた。
衣替えで心も変えて
冬を優しく穏やかに
生きてゆこうと思います
思いやりを持って助け合い
暮らしてゆこうと思います
勇気と希望を胸に
歩んでゆこうと思います
声が枯れるまで叫ぶ
声が枯れるまで泣く
声が枯れるまで…
人は言語能力を発達させました。これらの言葉は故に生まれた訳ですが、この人の言語能力に関して僕は最近とある言葉を耳にしたのです。皆一度は耳にし、概ねの納得と理解を見せるのですが、僕を含めて真に理解しているようには到底思えないのです。
「言葉は使い方次第で凶器になる」
ここでいう凶器はナイフや包丁なんかと違いちと厄介で、目に見えず透明で、僕の体のなかのなかまで土足で踏み入り、傷つける。致命傷じゃないのです。毒のように、じわじわと体を蝕むのです。時間がたって忘れたぐらいの頃に、ふと気がつくともう一度。何度も何度も蝕むようで、僕はこの言葉という表向きは華やかで綺麗な世界を演出しておきながら、裏向きは不信と欺瞞で満ちた醜悪な世界をもつ地獄のようなものを憎んで来たのです。
しかし、僕は思ったのです。もし言葉がなければと。想像したとき僕は体の芯から震え上がるような絶望と恐怖心で、人に対する不信は増幅する一方となったのです。
声が枯れるまで叫ぶ
声が枯れるまで泣く
声が枯れるまで…
言語が発達して、僕は寧ろ助けられていたのかも知れません。
僕が好きになったものが流行った。
僕が好きになったゲームが流行った。
僕が好きになった漫画が流行った。
僕が好きになった歌が流行った。
始まりはいつも僕だった。
気づいた。
「僕」じゃなくて「僕たち」だったこと。