川原

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4/26/2025, 10:06:39 PM

「どんなに離れていても」

しばらく河原の石だった
上流から ごろんごろん
他の石とぶつかり合ったり 離れたり
転がり落ちる間に 割れて剥がれて
剥き出しの尖った表面が
川底に刺さりながら また落ちていく

気がつくと河原だった
星が出ていた 
あの時剥がれた からだの一部が
遠い空から見下ろしていた

ここから海へと運ばれるのか
光に問うても答えは出ない
河原の自分にも飽きたら
今度は自分から転がるのもありかもしれない
それも良いねと
遠くで欠片のあなたは笑うだろう

3/1/2025, 1:53:52 PM

「芽吹きのとき」

あたたかな雨がわたしを濡らす
土の中で丸くなり眠っていた私は
かろうじて 多分まだ人

泥だらけの身体を起こして
ずり上がったシャツをジャージに入れ直せば
流石に立ち上がらなくちゃいけない
待たせてごめんねと言わなくちゃいけない

根気強く 返事をくれたあの人に
それが嬉しくもあり やれやれとも思う

おい 起きてるかい
どうやら春だよ
隣の畝に呼び掛ける私は
かろうじて まだ生きている





2/26/2025, 12:17:38 PM

「記録」

たまには私だって
誰かが淹れてくれた珈琲を
飲みたい時がある
インスタントの安いやつで良いんだ
適温とかお構いなしで
熱々のを一杯

もう何十年も 事務職やって
どれくらい淹れ続けているのかわからないけど
一度も 誰かに淹れて貰ったお茶を
飲んだ事はない
来客の人数を間違って余ってしまい
自分で飲んだ事はあるけど
一袋300円の緑茶を
適当に淹れた味がした
むしろ従業員用のほうじ茶の方がまだしもだ

いずれ私がここを去る時までに
誰かに淹れて貰ったお茶を
飲める事があるかしら
その時はぜじ
熱々の珈琲を一杯
インスタントので良いから


2/23/2025, 9:02:15 AM

何度見たかな
いくつ見たかな
数えきれないほどだよ

「君と見た虹」

最後に見たのはいつだったかな

消える前に早く早くと
スマホのレンズを向けても
目で見た姿には敵わなかった
ましてや
今は隣に あなたが居ない

いつかまた 会える特まで
ひとり見送る
空ににじんで消えゆく手紙



2/21/2025, 11:57:20 PM

「夜空を翔ける」

皆が口を揃えて 美しいと讃える月が
私にはまるで 
ダンボールに貼った色紙に見える
そんな夜に

ひとり 空を翔ける
張りぼての夜空から街の灯りを見下ろして
急降下 あれは昔住んでいた町

ここで毎日 空を見ていた
月も美しかった
今はもう 誰もいない町

あるはずのない 地面を蹴って
また空に昇る
輝く光は胸の中にある
私の空を照らしている

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