川原

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12/1/2024, 5:01:39 AM

「泣かないで」

泣くことなんてない
ここで泣かなければ 可哀想な人にはならない
しゃんと背筋を伸ばしていれば
弱くて惨めな人にはならない

そして私は執念深いから
忘れてやらない
あと3年は 恨みがましく記憶の手帳に
残しておくよ

その頃には あなたは私の人生の中では
ほんの数行の価値すらない存在だ
お互い 何かしらの仮想敵が
ストレスのはけ口が 一人は居るのだ

だけど私は あなた以上に腹黒いから
誰にでも笑顔で本当の自分は見せないよ

だから泣く事なんかない
悲しくなんかない 多分





11/19/2024, 2:53:44 PM

「キャンドル」

小さな火が
灯っていた

誰も気付かなくても
雪の日も
土日祝日も
年中無休で

小さな火だから
時々 忘れそうになるけれど
胸に手をあてると 
自分だけの 炎が揺らめく

誰も見向きもしなくても
そこにずっと 燃えていた


11/14/2024, 4:17:04 PM

「秋風」

秋風吹く 秋風吹く
眠れないこころに吹く

後ろ向きな言葉ばかり目に止まる時は
きっと心の中にすうすう 風が吹いているんだ
縮こまった手足を ゆるく伸ばして深呼吸
いち に

寒々とした夜空に 自分だけの光を探す

誰か助けて 誰かって誰だ
誰でもよくはない でも誰かじゃない
強張った身体を 丸まった背中を ゆるくそらして
そっと息をはく

誰でもない私が すうすうと風に吹かれながら

広くて狭い世界に 自分だけの灯りを灯す

11/10/2024, 10:59:48 AM

「ススキ」

今夜はキツネの魔女の集会だよ

そんな声が背中から聞こえて来て
振り向いたら
女の子二人組がバスを降りようとしていた

それだけで
降りるつもりのなかった場所に降りてしまった
停留所の名前は 薄ヶ原
知ってる
昔 この近くに住んでいたから
そうじゃなければ いくら何でも
こんな無謀な事はしない

いつの間にか夕闇が濃くなり
女の子ズの姿はもう見えなくなった
ひとり 月明かりを頼りに歩き出す
そもそも 私は何処へ行こうとバスに乗ったんだっけ

向かう先に
月に照らされた原っぱが見えてきて
遅かったねえとキツネの女の子が
群衆の中で手を振っている


11/10/2024, 6:22:54 AM

「脳裏」

改めて漢字で見るとドキッとする
のうりって こんな字面だったっけね
脳の裏っかわ 

誰しも何かを思い出そうと集中すると
頭の後ろを意識するものね
はて?ってやつ

目で追う情報と並行して
記憶と思考をぐるぐる巡らせて
更には会話までしたりして
ヒトって凄い

時々その緻密さに振り回されて
疲れてしまうけど
そんな時はしばし目を瞑って
頑丈なカプセルの中に居る自分を
脳裏に思い描いてみる

大丈夫 
意外と ヒトって凄い



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