「一筋の光」
買い物してたら
期間限定のお菓子が店頭に並んでて
これ あの人が好きだったなあって
だってミルキーのソーダ味ですよ
メリーのパチパチ弾けるチョコとか
よく買ってたんですよあの人
でもあの頃はもう食欲が落ちていて
酸っぱいものとかわさびとか
刺激のあるものばかり食べていたから
精一杯 パチパチの刺激で就業時間まで
耐えていたんだろう
懐かしくて一瞬 手を伸ばしたけど
やめて のど飴を買いました
あの人は一筋の光でした
光を失った世界で
進み続ける為に 私は今日は
プロポリス入りののど飴を買って帰りました
「眠りにつく前に」
布団に入ってから
その日あった事の
ひとり反省会をよくやる
あの一言は余計だっただろうか
あの一言が足りなかっただろうか
あの人にこんな事を言われた
ちきしょうめ
でも大概は
眠りにつくと
翌朝はさっぱりリセットされていて
リセットされてない事だけが
大きな問題として靴の先に入った小石になる
誰かに話して
靴を脱いで小石を払うように
リセット出来る事もあるし
話した事が 別の小石になる事もある
自分で入れた小石なら
いっそ自分で払ってしまおう
明日の朝の私のために
バッサバッサ払い落として
枕元に綺麗な靴を揃えて眠ろう
「子供のように」
子供のように じゃぶじゃぶ泣いて
幼子のように 地団駄を踏み
赤子のように 無防備に眠る
目が覚めたら
世界はひと皮剥けていた
傍に世界一つ分の抜け殻
新品のリモコンにくっついてる
フィルムのよう
まぶたは目やにでバリバリ
取り敢えず抜け殻を手に取り
ぼんやり眺めている自分は
大人なのやら子供なのやら
日の光を反射して 眩しい抜け殻に
鏡のように
むくんだ瞼の女が映っている
「放課後」
「おう 早く帰れよう」
三階の廊下から学年主任の声が響いてくる
いつの間にか日も落ちて薄暗い教室
冗談で 暗闇先生と名付けていた
暗闇先生が巡回に来たら帰る時間
2年生になったらクラスが分かれてしまったので
部活が終わった後は
隣の教室に行ってダラダラお喋りしていた
あの時の先生の顔は覚えてないけれど
不思議と巡回の時の声色は覚えていて
今でも夕暮れの帰り道に
たまに思い出す
早く帰れよう
校舎に 大人に
守られていたんだな
あの頃の私たち
「カーテン」
何もかも上手くいかない
暗い感情が渦を巻いている
カーテンの隅に 少しだけついたシミみたい
ただ聞いて欲しくてこぼした弱音に
「あのね 相手に期待するから辛いのよ」と
ド正論を返されて
貴方に解決して欲しかった訳ではなく
ただ
話しておきたかった
それだけだった
了解です
「貴方にも」期待しない事にします
金輪際 愚痴も言うまい
透けて見える傾聴のテクニックが
やわやわと滲んで
シミになっていく
明日 カーテンを丸洗いして
キレイさっぱり 流してしまおう
拗ねるなへこむな
私を私が憐れむな