川原

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11/10/2024, 10:59:48 AM

「ススキ」

今夜はキツネの魔女の集会だよ

そんな声が背中から聞こえて来て
振り向いたら
女の子二人組がバスを降りようとしていた

それだけで
降りるつもりのなかった場所に降りてしまった
停留所の名前は 薄ヶ原
知ってる
昔 この近くに住んでいたから
そうじゃなければ いくら何でも
こんな無謀な事はしない

いつの間にか夕闇が濃くなり
女の子ズの姿はもう見えなくなった
ひとり 月明かりを頼りに歩き出す
そもそも 私は何処へ行こうとバスに乗ったんだっけ

向かう先に
月に照らされた原っぱが見えてきて
遅かったねえとキツネの女の子が
群衆の中で手を振っている


11/10/2024, 6:22:54 AM

「脳裏」

改めて漢字で見るとドキッとする
のうりって こんな字面だったっけね
脳の裏っかわ 

誰しも何かを思い出そうと集中すると
頭の後ろを意識するものね
はて?ってやつ

目で追う情報と並行して
記憶と思考をぐるぐる巡らせて
更には会話までしたりして
ヒトって凄い

時々その緻密さに振り回されて
疲れてしまうけど
そんな時はしばし目を瞑って
頑丈なカプセルの中に居る自分を
脳裏に思い描いてみる

大丈夫 
意外と ヒトって凄い



11/5/2024, 1:11:48 PM

「一筋の光」

買い物してたら
期間限定のお菓子が店頭に並んでて
これ あの人が好きだったなあって

だってミルキーのソーダ味ですよ
メリーのパチパチ弾けるチョコとか
よく買ってたんですよあの人

でもあの頃はもう食欲が落ちていて
酸っぱいものとかわさびとか
刺激のあるものばかり食べていたから
精一杯 パチパチの刺激で就業時間まで
耐えていたんだろう

懐かしくて一瞬 手を伸ばしたけど
やめて のど飴を買いました

あの人は一筋の光でした
光を失った世界で
進み続ける為に 私は今日は
プロポリス入りののど飴を買って帰りました


11/3/2024, 9:15:27 AM

「眠りにつく前に」

布団に入ってから
その日あった事の
ひとり反省会をよくやる

あの一言は余計だっただろうか
あの一言が足りなかっただろうか

あの人にこんな事を言われた
ちきしょうめ
でも大概は
眠りにつくと
翌朝はさっぱりリセットされていて
リセットされてない事だけが
大きな問題として靴の先に入った小石になる

誰かに話して
靴を脱いで小石を払うように
リセット出来る事もあるし
話した事が 別の小石になる事もある

自分で入れた小石なら
いっそ自分で払ってしまおう
明日の朝の私のために
バッサバッサ払い落として
枕元に綺麗な靴を揃えて眠ろう

10/13/2024, 10:55:51 AM

「子供のように」

子供のように じゃぶじゃぶ泣いて
幼子のように 地団駄を踏み
赤子のように 無防備に眠る

目が覚めたら
世界はひと皮剥けていた
傍に世界一つ分の抜け殻
新品のリモコンにくっついてる
フィルムのよう

まぶたは目やにでバリバリ
取り敢えず抜け殻を手に取り
ぼんやり眺めている自分は
大人なのやら子供なのやら

日の光を反射して 眩しい抜け殻に
鏡のように
むくんだ瞼の女が映っている




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