川原

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4/7/2024, 10:50:49 AM

「沈む夕日」

母方の実家に行った帰りには いつも
電車の窓からあかあかと下りゆく儀式に歓声を上げた
あの頃 座席の隣りには母がいた

学校へ上がる前の幼児が
駅の名前を十も覚える程には 頻繁に
何故いつも父の車ではなく
電車で里に帰っていたのか

遠い記憶を辿っても
母の表情は思い出せず
尋ねる相手も もう居ないが
夕日という言葉で思い出すのは
あの頃見ていた 窓から見える日没



4/6/2024, 10:31:32 AM

「君の目を見つめると」

ごめんね私、花粉症でさ
(うん 初耳だけどね)

元気でね。無理しないでね
(うん あなたもね)

落ち着いたら 顔見に来るからね
(多分あなたはもう ここには来ないでしょう)



最初で最後の泣き顔
この人はいつも笑顔しか見せなかった
明日からはもう見る事が出来ない笑顔を
失ってから惜しむのだ 私も皆も





4/6/2024, 8:33:09 AM

銀紙を貼った厚紙の月
信号が変わった瞬間に
ペダルを漕いでから
いつもの帰路で気付いた

なんでよ月まで私を馬鹿にしているの
どうせ夜空もベニア板なんでしょう

泣けてくる 泣けてくる
涙で周りが舞台の書き割りに見える
いっそ向こうの世界があるならば
ベニヤ板の向こうまで突き抜けたい

ブレーキをかけて自転車を降りた
月はまだ銀紙をまとって
こちらを見ている